公式アカウント

“偏った認識”正す場に/長崎で加害の歴史語る、岡まさはる記念長崎平和資料館

2022年11月06日 13:02 歴史

植民地支配や侵略戦争など、日本の加害責任に焦点を当てた「岡まさはる記念長崎平和資料館」。長崎駅から徒歩5分弱、中華料理店を改装したという白い建物だ。

資料館は「長崎在日朝鮮人の人権を守る会」の代表で元長崎市議会議員の岡正治氏の遺志を受け継ごうと、市民らの手で建てられた。同氏の没後1年が経った1995年10月1日に開館、現在40人ほどのボランティアスタッフが運営に携わっている。

資料館を回ったことのある人はいう。「衝撃的な展示だった」。館内のいたるところにびっしりと展示されたパネルや写真の数々は、見るものを圧倒させ強烈な印象を与える。

なぜか。同館理事長の崎山昇さん(64)は「あまりに外の世界が偏っているから」と話す。「戦争に対する被害者意識しか与えられなかったから、ここに来て『私の知っている日本と違う』と衝撃を受ける」。資料館の開館から27年。当時から変わらず語り掛けるものとは。

抜け落ちた視点

同館は、設立当初から、アジア太平洋戦争の悲惨さを加害の視点から伝えることをポリシーとしてきた。「日本は過去の戦争で朝鮮半島や中国、アジア諸国へ植民地や侵略といった加害行為を行った。日本ではこの重要な視点が抜け落ちている」。だからこそ、資料館に来て認識の「偏り」を正してほしいと崎山さんは願う。

玄関の真向かいに大きく掲げられたのは、朝鮮人強制労働の現場が位置づけられた「長崎市原爆被害状況図」。そして、それを囲むように朝鮮人、中国人被爆者とその遺族の写真が展示されている。副理事長の新海智広さん(66)は「長崎で原爆の被害を受けたのは日本人だけではない。植民地支配によって連れてこられた朝鮮人と、強制連行にあった中国人の犠牲者も多数存在していたことを伝えたかった」と力を込める。

同館によると、祖国解放前の長崎県内には約7万人の朝鮮人が居住していた。そのうち3万人以上が被爆し、1万人以上が死亡。館内にある朝鮮人強制労働の暮らしの場所を再現して作られた「飯場」には、原爆投下で朝鮮人、中国人が犠牲になった背景について解説している。強制労働被害者の証言をもとに制作された食事の模型もあり、出口には炭鉱労働で使われたツルハシ、石炭が置かれた「摸擬炭鉱」も展示されている。

Facebook にシェア
LINEで送る