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関東大震災89周年、東京・荒川河川敷で追悼式

2012年09月05日 13:59 歴史

葬られた虐殺の事実を掘り起こし/〝加害の歴史、風化させてはいけない〟

関東大震災89周年韓国・朝鮮人殉難者追悼式が1日、東京都墨田区の荒川河川敷(四ツ木橋付近)で行われ、約130人の同胞、日本市民が参加した。

会場には約130人の市民たちが訪れた

追悼式では、「関東大震災時に虐殺された朝鮮人の遺骨を発掘し追悼する会」(以下「追悼する会」)の矢野恭子代表が開会のあいさつに立った。

関東大震災の時、虐殺の犠牲になった人たちをこの荒川河川敷で追悼するようになってから31年目。1970年代から始まり、活動の原点となっている関東大震災における朝鮮人虐殺事件に関する聞き書きは、公の資料に残っていない犠牲者たちの真実を伝えることに貢献してきたと矢野代表は報告した。月日がたち、被害者、目撃者たちの高齢化が進み聞き書きがいっそう困難になる中で、「どうにかして、想起し難い犠牲者たちを伝えることができないか」という思いを抱き有志らと今日まで活動を展開してきた。「2009年に建立された朝鮮人追悼碑を守り、事件を伝える人を広げていくことがなによりも追悼ではないかと思っている。『高校無償化』から朝鮮学校だけが除外されたままだが、何かあったら朝鮮人が社会からはじき出されるんだという追体験を朝鮮の子どもたちにさせてはいけない」と強調した。

「追悼する会」の矢野恭子代表

続いて、歌手・李松子さんが白いチマ・チョゴリを身にまとい、「アリラン」「鳳仙花」を歌った。

墨田区の姉妹都市であるソウル市西大門区の文錫珍区長から届いたメッセージが紹介された。

次に、専修大学の田中正敬教授と、墨田区の元教員である「平和憲法を守る荒川の会」の森本孝子共同代表があいさつした。

1923年9月7日以降、千葉・習志野収容所に収容された朝鮮人を軍隊が近隣の住民らに渡して殺させるという事件が起きた千葉県で関東大震災に関する調査をしている人たちに話を聞きながら、著書「地域に学ぶ関東大震災」を大学院生らと共に執筆した田中教授は、「過去を知らない私たちがリアリティを持って、亡くなった一人ひとりの朝鮮人犠牲者を思い浮かべるためには地域を歩くしかない。この事件を地域で長年調査・研究している方々の話は一言一言が身にしみたが、生の言葉は発されると同時に消えてなくなっていまう。それを一つひとつ記録していくことが何よりも重要」と話した。

森本共同代表は、今年で日朝平壌宣言10周年を迎えるが、この間国交正常化するという運動がおろそかにされてきてと指摘。また、日本にある外国人学校の中で朝鮮学校だけが「高校無償化」制度から除外され、各地の朝鮮学校で「補助金」がカットされるなど、日本の在日朝鮮人に対する差別政策を厳しく批判した。

追悼式では、プンムルノリサークル「ウリト」による演奏が披露された

「関東大震災の朝鮮人虐殺は、国の責任で調査されていないどころか、過去の事実をうやむやにしようとしている。しかし、この事件を決して風化させてはいけない。国がしっかりと責任を取るまで一緒にたたかっていこう」と呼びかけた。

最後に、プンムルノリサークル「ウリト」による演奏が披露され、朝鮮の打楽器の音色が河川敷上空に響き渡った。

 事件の真相追及する動き

89年前の9月1日午前11時58分、関東大震災が起きた。大震災による地震と火災の混乱の中で、6千人以上の朝鮮人が虐殺された。1日の晩、まさにこの地で軍、官憲、民衆たちの手によって虐殺された約100人の朝鮮人が虐殺され、埋められた。そして2日後には、軍隊や憲兵が2回に分けて土を掘り起こし、死体を持ち運んだ。

虐殺の事実が闇に葬られてはならないと、「追悼する会」の初代代表を務めた故絹田幸恵さんや一般社団法人ほうせんかを中心に、多くの市民たちの手によって歴史の掘り起こし作業が展開されてきた。

追悼碑に手を合わせる人々

1982年9月1日、荒川河川敷で関東大震災朝鮮人犠牲者の遺骨発掘作業が3日間にかけて行われた。その当時の様子や、体験者、目撃者たちの証言を収めたドキュメンタリー「隠された爪跡」が各地で上映されている。今年の追悼式当日も墨田区内の小学校で上映会が開かれた。

2009年8月29日、荒川河川敷そばの私有地に追悼碑が建立された。「加害の歴史を風化させてはいけない」という市民たちの手によって建てられた追悼碑には、「一九二三年関東大震災の時、日本の軍隊・警察・流言飛語を信じた民衆の手によって、多くの韓国・朝鮮人が殺害された。東京の下町一帯でも、植民地下の故郷を離れ日本に来ていた人々が、名も知られぬまま尊い命を奪われた。この歴史を心に刻み、犠牲者を追悼し、人権の回復と両民族の和解を願ってこの日を建立する。」と、明記されている。建立されて以降、近隣住民だけでなく、碑の存在を聞きつけた人たちが、フィールドワークなどを組んで地方からも訪れている。

虐殺の真実がまとめられた証言集

また、昨年から今年にかけて、「関東大震災時朝鮮人虐殺事件」の資料集が3冊発行された。一般社団法人ほうせんかの西崎雅夫代表を中心に、公立図書館にある資料をかたっぱしから調べ集めたもの、朝鮮人虐殺事件の体験者及び目撃者たちに直接聞き書きした証言などが多数掲載されている。そこには、様々な公的資料から意図的に削除された事件の真相も含まれている。

その他にもコンサートを開催するなどさまざまな活動に取り組んできた。

関東大震災発生から来年で90周年を迎える。森本さんは、「『慰安婦強制動員の証拠はない』といった言葉を淡々と発する極右勢力が政界をはじめ各界に台頭しつつある。その人たちが次期の総理にふさわしいと持ち上げる人たちも大勢いる。そういった動きを跳ね返していかないといけない」と力強く訴えた。

(尹梨奈)

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