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バウラックセミナー「吉田清治証言は生きている」開催/東京・立教大池袋キャンパス

2015年07月07日 10:42 主要ニュース 歴史

“真相究明の敵は真実の隠蔽”

6月27日、東京都・立教大学でバウラックセミナー「『吉田清治証言は生きている』著者今田氏に聞く取材の真相」が開催された。(主催=「戦争と女性への暴力」リサーチ・アクションセンター(VAWW RAC))会場には多数の市民が集まった。

セミナーでは今田真人氏(左)と西野瑠美子氏(右)による対談が行われた

セミナーでは今田真人氏(左)と西野瑠美子氏(右)による対談が行われた

昨今、日本軍「慰安婦」の問題をめぐっては、安倍首相が訪米時に「人身売買の犠牲となって筆舌に尽くしがたい思いをした方々には胸が痛む」と表明するのみで、日本軍が犯した過去の戦争犯罪に対しまったくの謝罪と補償をしていないのが現状。その後、歴史家たちによる緊急声明、「慰安婦」とされたハルモニたちによる日本政府を相手取った米裁判所への提訴など、新たなる戦争へとひた走る日本の歴史歪曲に歯止めをかけようと多くの声が上がっている。

戦後70年・植民地解放70年の歴史を考えるという趣旨で行われた今回のセミナーは、「慰安婦」報道の取り消しと吉田証言を虚偽としたメディアやそれを是認する日本社会に向けて警鐘を鳴らす場となった。

セミナーでは、特別招待としてフリージャーナリストで元「しんぶん赤旗」記者の今田真人氏が登壇。吉田清治氏に直接取材をした同氏に、インタビュアーの西野瑠美子・バウラック共同代表が質問をするという対談形式で行われた。

開会のあいさつを行った金富子・東京外大教授は、「朝日新聞に対する一連のバッシングで、日本軍『慰安婦』の強制性そのものが虚偽のように報道された。しかし吉田証言は本当に虚偽なのかと再検証する姿勢はまったくない」としながら、「その現状に真正面から異議を唱えたのが西野氏。異なる方向からその問い直しをしたのが今田氏。今日のセミナーはこの二人の出会いから実現した」と開催に至るまでの経緯を述べた。

西野氏はセミナーの冒頭で、「何をしたのか、あの時いったい何があったのか、それを聞くのが私たちの、そして日本の責任だ。吉田清治氏の証言というのは、まさに時の権力と証言という大きな課題を私たちに突きつけている。真相究明の最大の敵は、真実を知ろうという姿勢を封印することではないか」と訴えた。

さらに同氏は、朝日が記事の内容を虚偽とした事について、「(朝日新聞は)済州島の事例のみを検証記事として取り上げたが、実際に吉田氏は済州島だけではなく朝鮮半島全体からの強制連行について証言している」としながら、「97年の同新聞の特集では『真偽は確認できない』と虚偽の確証を得られていない状況がある。にもかかわらず2014年8月5日に虚偽と判断し記事を取り消した」と、記事取り消しの一連の流れから再検証を行うべきだと指摘した。

今田氏は、「吉田証言は反響がすごかった。なぜなら吉田氏は、戦時中徴用隊の責任者として慰安婦狩りをしていた人」と当時の状況について語る一方で、朝日の記事取り消しと時を同じくして、赤旗でも吉田証言関連記事の取り消しがあったことに触れた。同氏は、「自分で書いた記事だった。取り消しとわかった瞬間、冗談じゃないと思った」としながら、「吉田氏を3度にわたり取材してきた自分が、検証記事の検証をしようと思った」と語った。

その後セミナーでは、朝日新聞が虚偽の根拠とした8つの理由に対し、今田氏が公文書や吉田氏のインタビュー全文に基づいて指摘。

閉会にあたり西野氏は、「吉田証言つぶしというのは、たった一人の民間人つぶしという出来事ではない。隠された真実に向き合うことを自ら手放す私たち、市民やメディアに対しての大きな課題を突きつけている」と訴えた。(韓賢珠)(対談詳報は後日掲載予定)

 

*吉田証言=故吉田清治氏の証言は1980年代から90年代初めにかけて朝日新聞などに掲載されてきた。それらの報道のうち、済州島で「慰安婦」を強制連行したと語っていた同氏の証言に基づく記事について、朝日新聞は2014年8月5日付で「検証記事」を掲げ、“証言は虚偽だと判断し、記事を取り消す”と結論づけた。

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