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吉見義明教授が院内集会で講演

2013年06月20日 10:55 主要ニュース

「日本軍『慰安婦』問題の本質は何か」

日本軍「慰安婦」問題に関する院内集会「歴史認識・請求権、徹底論議!」が18日、衆議院第2議員会館内で行われた。

「慰安婦」問題をめぐってはこの間、官憲による暴行・脅迫を用いた連行はなかった、「慰安婦」問題は業者と公娼による商行為である、当時「慰安婦」制度は合法であった、個人補償問題は日韓請求権協定で解決済みであるなどの政治家による妄言が繰り返された。

院内集会の様子

院内集会の様子

集会では、日本軍「慰安婦」問題の本質、そして今日的な争点について、参加者たちが認識を深めた。

まず、「慰安婦」問題研究の第一人者である中央大学の吉見義明教授が、橋下徹大阪市長に提出した公開質問状をもとに、「歴史認識―日本軍『慰安婦』問題の本質は何か」と題した講演を行った。

昨年8月24日、橋下市長が「(吉見教授が)強制連行の事実までは認められないと発言している」と述べたことについて、吉見教授は「事実無根である」と抗議。今月4日、橋下市長に対して公開質問状を出してこの発言の撤回と謝罪を要求するとともに、「慰安婦」問題をめぐる市長の認識等について質問し、徹底的に論破している。

続いて、弁護士の川上詩郎さんが、「補償の法的根拠―政府の『解決済み論』を乗り越える」と題して講演し、最高裁判決を前提として個人補償は法的に可能であると指摘した。

吉見義明教授

吉見義明教授

川上弁護士はまず、日本軍「慰安婦」問題をめぐる懸案の一つとして、個人賠償請求の問題があるが、この問題については日本政府の「サンフランシスコ平和条約及び二国間条約(日韓請求権協定など)により放棄され法的には解決済みである」という見解と、南朝鮮政府の「『慰安婦』とされた被害者の日本国に対する個人賠償請求権は、日韓請求権協定2条1項で放棄されていない」との相反する見解があるとした。

その一方で、2007年に出された最高裁判決(日本国を相手とする中国人「慰安婦」裁判と、西松建設を相手とする中国人強制連行裁判にまつわる判決)が、サンフランシスコ平和条約14条(b)の請求権の「放棄」とは、「請求権を実体的に消滅させることまでを意味するものではなく、当該請求権に基づいて裁判上訴求する権能を失わせるにとどまるものと解するのが相当である」との判断を示したことに言及。実体的な請求権は未だ消滅していないと指摘した。また、これは裏返して言えば、日本国が被害者個人に補償をすることについて、何らの法的障害はなく、あとは日本政府の政治決断にかかっていると強調した。

安倍政権の歴史認識に危機感

集会には社民党の福島みずほ議員と日本共産党の赤嶺政賢議員も出席し、それぞれあいさつしたほか、参加者たちからの発言や質疑もあった。

「子どもと教科書全国ネット21」の俵義文事務局長は、「安倍政権は『慰安婦』や南京虐殺の問題など、日本の侵略や加害、そして植民地支配の事実を教科書から消すため、新たに『教科書法』を制定しようとしている。これは事実上、(戦前の)国定教科書を作るというもので、こんな法律が作られたら、国際社会において日本がまったく孤立することにもなりかねない」と強調した。

ジャーナリストの斎藤貴男さんは、「日本と外国との間で問題が起こる時、必ず昔の戦争の話が出てくる。いま、TPPや在日米軍再編の問題などで対米関係がいろいろと難しいが、そういうものに対して物申すことは絶対にせず、むしろ事あるたびに昔の植民地支配を自慢するような、それで自らを慰めるような傾向があるように思えてならない。これはこれからの日本の国のあり方に深く関わってくる問題」だと危惧した。

(金里映)

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