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ねらいは「戦争ができる国」、「暴走」する日本(上)

2013年05月20日 15:21 主要ニュース 歴史

「歴史問題」噴出、なぜ?/背景に「戦後レジームからの脱却」

安倍政権の「暴走」が止まらない。

首相をはじめとする政治家たちによって、過去の戦争責任を忘却したかのような妄言が繰り返されている。さらには、戦争放棄と交戦権否認等を定めた平和憲法改悪に向けた動きがいよいよ本格化している。

これら一連の現象は、戦後民主主義を否定し、「戦争ができる国」づくりを推し進める安倍政権の本質を浮かび上がらせている。

高支持率背景に

昨年12月、超タカ派と改憲勢力からなる第2次安倍内閣が成立。安倍晋三氏は再び政権トップの座についた。

当初、今年夏の参院選まではいわゆる「安倍カラー」を抑えた「安全運転」に努めるのではないかという憶測があったが、安倍政権は高支持率を追い風として、最近になって右傾化を露骨に進めている。

4月21日、靖国神社に麻生太郎副総理ら閣僚3人(同23日には国会議員168人)が参拝、安倍首相自らも供物を奉納した。

安倍政権の歴史認識をめぐる言動を非難する南朝鮮の野党・統合進歩党のメンバー(2日、連合ニュース)

翌22日の参院予算委員会で安倍首相は、過去の侵略や植民地支配を謝罪した「村山談話」(1995年8月15日)について「安倍内閣としてそのまま継承しているわけではない」と発言。同23日には「侵略の定義は学界的にも国際的にも定まっていない」と持論を展開し、物議を醸した。

中国や南朝鮮をはじめ、米国からも強い批判の声があがるや、菅義偉官房長官は10日、「村山談話」について「安倍内閣として侵略の事実を否定したことはない。(談話)全体を歴代内閣と同じように引き継ぐ」と述べ、先の安倍首相の国会答弁を事実上修正し、火消しに努めた。

しかし安倍首相本人は、いまだ「侵略の定義は定まっていない」との発言を撤回していない。

さらに、首相のこのような歴史認識の発露を背景に、右派政治家の問題発言も多数飛び出している。

「(村山談話について)侵略という文言を入れているのは私自身しっくりきていない。自存自衛のために決然と立って戦うというのが当時の解釈だった」(12日、自民党・高市早苗政調会長)

「慰安婦制度は必要だった」(13日、日本維新の会共同代表・橋下徹大阪市長)

「(アジア太平洋戦争における旧日本軍の行為は)侵略じゃない。あの戦争が侵略だと規定することは自虐でしかない。歴史に関しての無知」(17日、石原慎太郎・日本維新の会共同代表)

加害の歴史を否定

安倍首相の歴史認識は、日本の侵略戦争の加害の歴史を認めないというスタンスに立脚している。

安倍首相はとりわけ、戦後の歴史教育について「自虐史観」の影響を受けているとして否定し、従来の教科書から日本軍「慰安婦」や南京大虐殺に関する記述を削除するよう働きかける右派グループの先頭に立ってきた。

戦時の「慰安婦」に対し旧日本軍の関与を認めた「河野談話」(93年8月)についても、「確たる証拠はない」などとして激しく攻撃を加えてきた。

2006年9月、「戦後レジームからの脱却」をスローガンとして掲げ首相に選出された安倍氏は、まず教育においてこれを実現しようとした。侵略戦争の歴史を隠蔽・美化し、人々の意識を根底から変えていこうというのが、教育における「戦後レジームからの脱却」の核心だった。

安倍氏は同年12月15日、野党や市民団体からの強力な反対を押し切って、教育基本法を国会で改悪。国家が学校、さらには家庭教育にまで介入できる内容を盛り込んだ。

新教育基本法に則って改悪された新たな学習指導要領と教科書検定制度によって、授業内容や教科書の中身が日本の国策に沿うものへと変えられていった。

安倍政権2期目の現在、新教育基本法を盾に歴史教科書の改ざんがよりいっそう進行しようとしている。

安倍首相率いる自民党は4月24日、教育再生実行本部特別部会の初会合で、教科書検定基準をめぐり、「近隣のアジア諸国との間の歴史的事象の扱いに配慮する」という「近隣諸国条項」を見直す方針を確認した。6月に政府への提言案をまとめる見通し。

4月10日の国会答弁で安倍首相は、最近検定に合格した高校用の一部の教科書に、日本軍が「慰安婦」を強制動員したという記述があることを念頭に置いたうえで、「残念ながら、教科書の検定基準が愛国心や郷土愛を尊重することとした改正教育基本法の精神を生かせないものとなっている」と指摘し、「近隣諸国条項」見直しを示唆した。

「近隣諸国条項」が削除されれば、日本の「侵略」が「進出」などといった記述に書き換えられる可能性がある。

深まる国際的孤立

安倍政権は、戦後から今まで続いてきた日本の国の在り方を抜本的に変えようとしている。その真骨頂とは、憲法改悪である。

安倍首相をはじめとする改憲論者たちは、「現行の憲法はGHQに押し付けられたもの。自らの手でつくり変えなければならない」などと主張するとともに、国益に沿った彼らにとって都合の良い歴史観を自国民に植え付けようと躍起になっている。

しかし、このような日本の政治姿勢は今、海外からの厳しい批判にさらされており、安倍政権は国際的孤立を深めている。

米議会調査局は1日に公表した日米関係に関する報告書の中で、安倍首相を「強硬なナショナリスト」であるとしたうえで、歴史認識問題をめぐる一連の言動について「地域の関係を壊し、米国の利益を損なうおそれがあるとの懸念を生んだ」と指摘した。

中国の環球時報14日付は社説で、「安倍氏の任期中、中国の指導者は彼と会談する必要はない。会談しても中日関係に具体的な緩和はもたらされず、安倍氏の政治的得点稼ぎを助け、中国自身のイメージを損なうだけだ」と厳しい姿勢を示した。

(金里映)

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