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〈続・歴史×状況×言葉・朝鮮植民地支配と日本文学 51〉朝鮮への愛着、そして自己内省/村山知義

小説家・画家・デザイナー・劇作家・演出家・ダンサー・詩人…など様々な顔を持って戦前戦後に活躍した村山知義について、その作品は一般にはほとんど忘れられているものの、植民地文化研究では言及が後を絶たない。…

〈続・歴史×状況×言葉・朝鮮植民地支配と日本文学 42〉重なり合う歴史と戦争と身体/日野啓三①

日野啓三は、都市を舞台にSF的手法なども取り入れた、幻想的作品の「抱擁」や「夢の島」など、1980年代に発表された作品が有名だ。しかし、1960年、敗戦による引揚げ以来特派員として再び訪れた軍政下のソ…

〈続・歴史×状況×言葉・朝鮮植民地支配と日本文学 41〉連帯の神話を超えるために/書評・廣瀬陽一「中野重治と朝鮮問題」を読む

廣瀬陽一著「中野重治と朝鮮問題――連帯の神話を超えて」が手元に届いた。終生朝鮮と向き合い続けた中野重治の朝鮮認識、その変容と発展の過程について、主として敗戦後から晩年までのテクストを、朝鮮、在日朝鮮人…

〈続・歴史×状況×言葉・朝鮮植民地支配と日本文学 40〉憎悪・怨嗟の炎、…希望の炎は?/放火と文学

この年末年始にかけて思うところがあって、「放火と文学」ということを書こうと思う。 不謹慎と思われるかもしれないが、文学芸術は炎、火事、放火を重要なモチーフとして描き続けてきた。燃え上がる恋愛の比喩とし…

〈続・歴史×状況×言葉・朝鮮植民地支配と日本文学 38〉卞宰洙先生を偲ぶ

卞宰洙(ピョン・ジェス)先生が逝かれた。私にとっては、朝鮮大学校外国語学部で教わった恩師であり、日本文学研究と教育面でその後を受け継いでいる点では、直接の大先輩にあたる。まだ実感がわかない。不思議と卞…

〈続・歴史×状況×言葉・朝鮮植民地支配と日本文学 36〉魯迅文学の真髄と可能性/魯迅②

  中野重治は、魯迅について書いた「ある側面」(1956)という文章で、「故郷」の末尾の「希望」「道」について、「明るい言葉として、前途に光明を認めて歩きだすものの合言葉として引用している」…

〈続・歴史×状況×言葉・朝鮮植民地支配と日本文学 35〉魯迅文学の読まれ方をめぐって/魯迅①

中国近代文学の古典として、日本で多数翻訳され、1950年代にはじまり70年代以降今日までほとんどの出版社で「国語」教科書に採録され続けてきたことで、「日本語文学」として異例といってよいほど読み継がれて…

〈続・歴史×状況×言葉・朝鮮植民地支配と日本文学 34〉略奪文化財の行方をめぐって/五木寛之

  つい先月の26日、元本紙記者で、植民地期に略奪された朝鮮文化財の調査と返還問題に生涯取り組み続けた、故南永昌氏の遺稿集「奪われた朝鮮文化財、なぜ日本に」出版記念講演「今こそ問う朝鮮文化財…

〈続・歴史×状況×言葉・朝鮮植民地支配と日本文学 33〉「個人」が横取りする「身世打鈴」/古山高麗雄④

  古山高麗雄には「身世打鈴」のタイトルで、1970年代後半に何度か南朝鮮を訪れた紀行と、朝鮮や軍「慰安婦」についての考えを綴ったエッセイを織り交ぜた連載があり、80年に単行本化されている。…

〈続・歴史×状況×言葉・朝鮮植民地支配と日本文学 32〉歴史否定を上塗りする「追憶」/古山高麗雄③

近年日本の歴史否認の政治と言説・思想状況を作り出しているのは、「韓日右派ネットワーク」による「和解」や「合意」の合作であるが、日本の左派やリベラル派を名乗るメディアや知識人もこの「韓日合作」の過去否定…

〈続・歴史×状況×言葉・朝鮮植民地支配と日本文学 31〉二人の元戦犯を重ねて考える/古山高麗雄②

古山高麗雄について読み直しこの文章を書いているさなかの3月28日、李鶴来さんの訃報に接した。第2次世界大戦の戦犯裁判でBC級戦犯として一度は死刑を宣告され、有期刑に減刑された後、1956年に仮釈放され…

〈続・歴史×状況×言葉・朝鮮植民地支配と日本文学 30〉何からの「未/復員」なのか?/古山高麗雄①

前回までとりあげた後藤明生とともに「内向の世代」に数えられ、かつ同じく植民地朝鮮出身の作家に古山高麗雄(ふるやまこまお)がいる。1920年新義州生まれ(そこから「高麗雄」と名付けられた)の古山の方が年…

〈続・歴史×状況×言葉・朝鮮植民地支配と日本文学 29〉「実感」の政治と歴史否認の土壌/後藤明生④

後藤明生は少年時代の朝鮮体験、引揚げ体験に基づき、「一通の長い母親からの手紙」(1970)、「挟み撃ち」(73)を書いた後、朝鮮での記憶と現在とを往復する連作を続け、それらは連作小説集「夢かたり」(7…

〈続・歴史×状況×言葉・朝鮮植民地支配と日本文学 28〉「実感」に閉じこもる個人の「記憶」/後藤明生③

後藤明生の「挟み撃ち」(1973)は、中学一年のとき朝鮮北部で敗戦を迎えた主人公赤木が、帰国後数十年を経て、ロシアの作家ゴーゴリの小説「外套」の内容を作中でなぞりつつ、かつて身に着けた旧陸軍の外套の行…

〈続・歴史×状況×言葉・朝鮮植民地支配と日本文学 27〉操作され正当化される「記憶」/後藤明生②

後藤明生という名前すら今ではほとんど忘れ去られてしまっている感があるが、代表作である「挟み撃ち」(1973年)へとテーマ、内容とも継承される「一通の長い母親からの手紙」という作品がある。後藤明生の特徴…

〈続・歴史×状況×言葉・朝鮮植民地支配と日本文学 26〉「無知と無視」「開き直り」と、「内向」と/後藤明生①

今月16日、高校無償化制度からの朝鮮学校除外をめぐり、またもや広島高裁による不当判決が下された。その翌日、巨額の税金を費やし中曽根康弘元首相の合同葬が行われた。同時進行されたこの二つの醜悪な風景が、ど…

〈続・歴史×状況×言葉・朝鮮植民地支配と日本文学 25〉文学が語る「夢」「幸福」/朝大文学カフェにて

勤務先である朝鮮大学校朝鮮問題研究センター・朝鮮文化研究室の企画の一環として、今年度「朝大文学カフェ」という文学読書会形式の学習会を立ち上げた。その本格的な運営に先立つプレイベント、試験的なパイロット…

〈続・歴史×状況×言葉・朝鮮植民地支配と日本文学 24〉「仮面」と、他者と、朝鮮人と/安部公房⑤

「他人の顔」(1964)の主人公は、事故で顔を失ったことが自己の喪失へとそのまま結びつく苦悩に苛まれる。数回にわたり安部公房の植民地体験をとりあげた本連載の問題意識からすれば、「顔」を失うことは、その…