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〈続・歴史×状況×言葉・朝鮮植民地支配と日本文学 42〉重なり合う歴史と戦争と身体/日野啓三①

2022年03月25日 08:00 寄稿

連作短編集『風の地平』(中公文庫)

日野啓三は、都市を舞台にSF的手法なども取り入れた、幻想的作品の「抱擁」や「夢の島」など、1980年代に発表された作品が有名だ。しかし、1960年、敗戦による引揚げ以来特派員として再び訪れた軍政下のソウルで知り合った現地人の妻を日本に呼び寄せて再婚し、ベトナム戦争の現地取材に基づいた作家デビュー、特に妻との関係を題材に60年代末から70年代にかけて書かれた「自己拘束的な写実的・私小説的な連作」(作者の言)群は、のちに開花した代表作を形成する日野の文学的・思想的基盤としても、かつ植民地以来の朝鮮に対する特異な態度としても注目される。

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