短編小説「魚のために道をひらこう」6/陳載煥
2022年02月18日 06:21
こうして二人の間に、15年続いた友情と親愛感がよみがえったかに見えた。 「下流から始めようじゃないか……」 踏査のプランを相談しているとき、ジュンハがこう言いだした。実はテソンは、上流から調査を始めた…
短編小説「魚のために道をひらこう」5/陳載煥
2022年02月14日 07:14
「そんなことは絵に描いた餅と同じで、できやせん!」 「おれはやるよ。嫌だったら黙ってひっこんでろ! おれは、必ず自然養魚をやってみせるから!」 ついにテソンは、休暇を利用して480キロにわたる大同江の…
短編小説「魚のために道をひらこう」4/陳載煥
2022年02月09日 06:51
ところが養魚場の池を作る段になると、二人の意見は食い違った。ジュンハは科学的に、また技術の面からみて、池の周囲に木を植えてはならないと主張したが、テソンはそれにはかまわず、わざわざ周囲にびっしり木を移…
短編小説「魚のために道をひらこう」3/陳載煥
2022年02月07日 07:20
いろいろな思いに時のたつのも忘れていた彼は、ふとわれに返ると先を急がなければ……、一秒でも遅くなると、それだけ河を裏切るようでぐずぐずしてはいられないと心があせった。 水をくんで米を洗い、魚を料理して…
短編小説「魚のために道をひらこう」3/陳載煥
2022年02月07日 07:20
いろいろな思いに時のたつのも忘れていた彼は、ふとわれに返ると先を急がなければ……、一秒でも遅くなると、それだけ河を裏切るようでぐずぐずしてはいられないと心があせった。 水をくんで米を洗い、魚を料理して…
短編小説「魚のために道をひらこう」2/陳載煥
2022年02月04日 08:25
吐きつけるような登山帽の言葉は、挑戦的なふくみをもっていたが、麦わら帽は、また始まったと言わんばかりに、あまり気にもかけていないように見えた。そして、もつれたリュックサックのひもを、指先でなおしている…
短編小説「魚のために道をひらこう」1/陳載煥
2022年02月02日 11:49
1章 容赦なく照り付ける八月の太陽の下で深い緑につつまれた山なみも、森も林も、暑さにあえいでいた。 青い流れに沿って、細長くのびている河原を、男が二人さかのぼっていく。 すたすたと先を行く男は、古ぼけ…
短編小説「燃える島」14/黄健
2022年01月30日 10:18
まず、3番手宛の電文を読み終えると、すぐ次の電文に目を走らせた。 「8時47分…… 中隊長以下全員6名 手榴弾ト自動小銃ヲタズサエ岸辺ヘ向カウ 敵ハ舟艇ヨリ降リテ イッセイニ上陸ヲ開始 岩ノカゲ 爆弾…
短編小説「燃える島」13/黄健
2022年01月28日 13:57
「いけない! きみの任務は、それではない」 大勲の言葉は厳しかった。それでも、彼の顔を哀願するような眼差しでじっと見つめていた貞姫は、あきらめたような、低い声で言った。 「それでは……、私にも手榴弾を…
短編小説「燃える島」12/黄健
2022年01月24日 07:57
やがて、通路の方から、李大勲中隊長を先頭に、それぞれ自動小銃と手榴弾を手にした中隊員たちの姿が現れた。貞姫は、一人ひとりの顔をじっと見た。中隊長以下全員6名、いずれの顔にもみないつもと少しも変わらぬ闘…