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〈朝鮮「食」探訪記 11〉ビ-ル飲み比べ

2020年06月03日 16:53 主要ニュース

飲み比べをした朝鮮のビール

今、ウリナラで一番有名なビールといえば、大同江ビールであろう。すっきりとした飲みやすさが人気の決め手、とでも言えようか。最近は瓶以外にもサーバーからの生ビールをはじめ、缶、ペットボトルなどさまざまな形態が出ている。

ウリナラの瓶ビールの始まりは1970年代初旬、リョンソンビールからだとされ、その後ポンハクビール、金剛ビール、平壌ビールなどが1980年代に登場する。当時のビールは泡があまり出ないが、濃いブラウン色を帯びていて、甘みや深いコクと味わいが特徴。

2002年、ウリナラでは金正日総書記の直接的な指導により麦芽の種類や焙煎法、酵母の種類、ホップの量や製造方法さらに生産量、瓶の質にいたるまで研究を重ね、以前と趣が違う大同江ビールが登場した。

そもそもビールとは「麦芽を主原料とする発泡性の醸造酒」。ビール造りは今から約5500年前にメソポタミア文明を築いたシュメール人が残した楔形文字、古代エジプト文明の壁画に描かれている。

ビールは酵母の違いから概ね「エール」と「ラガー」に分かれる。エール酵母は「上面発酵酵母」ともいい、歴史的にラガーより古く、発酵が終わった酵母が浮上する様からこう呼ばれ、英国でよく飲まれている。ラガー酵母は「下面発酵酵母」で現在のビールの主流になっている。ラガービールは15世紀ごろ冬期に保存しておいたビールを春に出してみたら意外にうまかったという偶然の発見である。

ビール製造はまず麦芽を作ることから始まる。麦芽にすることで澱粉を分解するアミラーゼが作られ、これが澱粉を分解し糖ができる。即ち糖化だ。この糖を酵母が餌として食べ、アルコールと炭酸ガスに分解する。さらに現代のビールに欠かせないのがホップ。ホップを使用すると苦みと芳香、泡持ちをよくし殺菌効果により保管期間が伸び品質向上にも役立つ。ちなみに大同江ビールはラガービールである。

普通江のほとりにある万寿橋清涼飲料店

ビール購入し、ホテルで

さて2019年4月、平壌で姉と息子とで大同江ビールを飲みながら私が「これ、日本で飲んだビールに近い味がするけど何だろう?」と話すと、息子は「ホワイトベルグに似ていない?」(ベルギー産ビール、柑橘系の香りが特徴)と。あまりのベストマッチに大きな声で「そうそう!」と相槌をうった。私の味覚は他の人より正確で適切に評価できると自称していたが、息子の味覚の鋭さに感服した。

息子のこのコメントに火がついた私は、他のさまざまなビールを飲み比べようとさっそく光復地区商業中心ストアに出向きビールを購入した。チョイスしたビールは金剛ビール、黒ビール、リョンソンビール、キョンフンビール、ウナスビール。

私は元々、芳醇で少し甘みかかったリョンソンビールが好きでその日もおいしくいただいた。ウナスビールは初めて飲んでみたが、黄金色で泡立ちが大同江ビールよりも少なく、独特の香りが鼻の奥までフワッと広がり酸味かかった味わいのビール。黒ビールは濃色だが甘みがあるライトなボディーであった。

一番私好みだったのはキョンフンビールで、リョンソンビールに近いがそれよりも炭酸強めの喉越しが特徴。最近ウリナラに両江道の麦を使用したクラフトビール店ができ、評判と聞いた。ぜひ味比べをしてみたい。

(金貞淑・朝鮮大学校短期学部教授)

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