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「のらりくらり」の内幕

2024年04月24日 09:30 取材ノート

サッカー朝鮮代表の7年ぶりの来日は、極めて高い注目度でトレンドをかっさらった。

3月の男子代表の取材を担当した筆者は、選手たちが日本を発つ日、かれらが宿泊する都内ホテルのロビーで出待ちするファンに遭遇した。選手らがロビーに見えると、ハン・グァンソン選手に駆け寄り何やら話しかけるそのファン。2人のやり取りが終わるのを待って声をかけてみると、なんと千葉から遥々見送りにきたという。ハン選手のイタリア・ユベントス時代からのファンだというその同胞は「アジア人では中々いけないセリエAに居たこと自体すごい。ブランクもあり大変だったと思うが依然としてプレーにキレがあった。間近で見るとさらに格好良かった」と興奮冷めやらぬ様子だった。

一方、感情を全面に出していた女子代表監督とは対照的な男子代表監督のようすを、日本のメディアは「のらりくらり」という表現を使い報じた。前日にあった公式記者会見で、戦術に関する質問が飛んだ際、監督が答えることを「拒否」したためだった。

けれどこれは切り取られた側面で、正確性を欠く。なぜなら監督は会見で繰り返し「죄송한데」と前置きし、具体的な戦術は言えないと話していたからだ。

朝鮮民族にとって「죄송하다」はまるで罪を犯したような気分になるほどに申し訳ないことを意味する、いわば最大の謝罪。この謝罪を、質問に対する返答の冒頭に毎回つけながら対応する監督の姿に、筆者はむしろ誠意を感じたほどだ。この内幕を知らない大多数が占める会見場で、監督の思いを汲み取れる記者でいれた新報記者の希少価値を改めて感じた一日だった。

(賢)

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