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「民族」との出会い/金サラン

2024年03月08日 09:43 それぞれの四季

私が初めて「民族」に出会ったのは中学生の時だった。

父が突然自らを、結婚を機に日本籍になった朝鮮人であると話し、「差別を受けるかもしれないから出自のことは隠して生きていくように」と付け加えた。自分に半分朝鮮の血が流れていることを知り大きなショックを受けて眠れない夜が続いた。自分の出自を卑しく思ってしまう、差別を内包する弱い自分が憎かった。自分の中の差別に気づいた原体験でもあった。

それから20年が経った2年前、ある朝鮮人と出会った。

かれは「在日朝鮮人です」とサラリと自己紹介し、私は初対面の人に初めて出自を話した。2回目の「民族」との出会いである。この機会を逃すと自分の出自について一生肯定することはできないだろうと思い、ルーツの扉を開きたいと打ち明けた。するとかれは「朝鮮人であることにポジティブに向き合えるようになったのであれば同じ朝鮮人として嬉しく思う」と応えた。今までの苦しみから解放されたような嬉しさ、朝鮮を卑下してきた申し訳なさ、色々な感情が押し寄せてきてむせび泣いた。

今、私は朝鮮と日本のはざまでゆらぎながら、朝鮮名を名乗り、同胞社会にゆるやかにつながっている。消えることのない後ろめたさと少しの疎外感を感じながらもたくさんの同胞愛を受けて「わたしの朝鮮」を求めて日々模索している。

(兵庫県尼崎市在住)

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