【連載】「育つ力~いまを支える人々が語る民族教育~」/Episode4・静岡初中 民族教育支援事業
2024年02月20日 09:20 民族教育県内唯一の朝鮮学校を守る
静岡初中は今年、学校創立60周年を迎える。中部地方の民族教育の一翼を担う同校は、県内唯一の朝鮮学校として子どもたちが民族性を育む場、そして同胞たちの心の拠り所となっている。
昨年11月に、静岡民族教育の発展と学校の魅力をより増進させるべく、静岡初中創立60周年記念事業実行委員会が発足された。同月には、学校を取り囲む老朽化したブロック塀撤去事業のクラウドファンディングを実施。すべての機関、団体が一丸となってこれに取り組んだ結果、支援の輪が広がり、目標額を超える資金が集まった。
同校を支える活動でとりわけ存在感を放っているのが、オモニ会や青商会をはじめとする子育て世代と、朝青世代の同胞たちだ。
同校オモニ会では月に1回のキムチ販売をはじめ、お中元の時期のそうめん販売、学校行事における飲食販売など、地道な活動を通じて得た収益を学校に還元。「保護者、家庭の負担にならないように」と、学校部活動の遠征や講習などの費用をサポートしている。また女性同盟とタッグを組み、月に1回、幼児教室を実施。七夕やクリスマスといったシーズンごとのイベントや朝鮮語の勉強、在学生と触れ合い交流を深める企画など、学齢前児童とその母親たちが静岡初中を訪ねるきっかけ、学校をより身近に感じる場を積極的に設けてきた。
静岡県青商会は、年に1回のチャリティーゴルフコンペ「ハナカップ」やフットサル大会など、朝鮮学校の財政を支える活動を着実に展開している。なかでも、今年で38回目の開催を迎えるチャリティーゴルフコンペは、過去に青商会の活動が休止状態に陥り、幹事や会員たちが多くない状況下でも欠かさず開催し、毎年、一定のチャリティー金を集めている。また、学校の設備を修繕するという目的のもとに行うフットサル大会には、同校の児童、生徒らをはじめとする子どもから青商会の会員、県内の同胞ら大人たちが参加、昨年で3回目を迎えた。ほかにも、学期ごとの青商会給食、同校児童、生徒たちの見聞を広げるために、福祉事業や金属加工業など青商会の幹事らが勤める企業を体験する社会科見学をはじめ、青商会のスローガンを実現し、静岡民族教育を守るために汗をかいている。
朝青は、月に1回の土曜児童教室や愛校活動、朝青主導の「一口運動」の展開など、「学校を守る活動で朝青が主人公になろう」というスローガンを実践している。
このように各団体がまい進する活動には、同胞社会の存続をかけて「県内唯一の朝鮮学校を守る」という熱き思いが込められている。
「地道な活動が児童、生徒数の増加につながると信じている」(全朋廣県青商会会長)
子育て世代として、同胞社会を担う青商会と次代を担う朝青のメンバーたちは、「やってきたことは間違っていない」という信念を胸に抱いて、活動に励んでいる。
地道な活動が生んだ関係性
現在静岡初中には12人の児童、生徒たちが在籍している。
同校オモニ会の玄明玉さん(45)は3人の子どもを送っている。初1と初4の娘は、同級生がいない1人クラスだ。同校で8年間、教壇に立った経験がある玄さんは「在日朝鮮人としてのアイデンティティを