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〈トンポの暮らしを支える/こちら同胞法律・生活センターです! 40〉最新の統計からみるDV

2023年11月14日 07:00 寄稿

昨年もこのコーナーでDV(ドメスティックバイオレンス、配偶者間暴力)についてとりあげましたが、今号は最近公表された内閣府や警察庁の統計等をもとにDVについて解説します。

■DVについて様々な定義がなされています。内閣府のHPでは「配偶者や恋人など親密な関係にある、またはあった者から振るわれる暴力」、民間団体の全国女性シェルターネットは「夫婦や恋人、好意を寄せた相手など、親密な関係にある人(または元の夫婦や恋人)からの虐待、脅迫、侮辱、非難、抑圧、殴るなどさまざまな方法で自由を奪われ、人間としての尊厳を否定され、支配されること」、アメリカの司法省のHPでは「・・・それがどのような関係にあれ、親密な関係の相手にたいして力や権力を持ち、相手を支配し続けるためにその力を使って繰り返し行う残虐行為である。DVは、身体的、性的、感情的、経済的暴力、あるいは心理的攻撃や脅威など、相手に影響を与える行為である」とあります。そして日本のDV防止法をみると、その前文において「・・・配偶者からの暴力は、犯罪となる行為をも含む重大な人権侵害である・・・」とあります。

 これらを踏まえるとき、DVとは「親密な関係にある相手からふるわれる暴力であり、『力』を用いて相手を支配しようとする行為であり、心身に打撃を与え、自由と尊厳を奪う、重大な人権侵害」と言えます。暴力には様々な形態があるものの、親密な関係における「力による支配」が重要なキーワードと言えます。

今年7月の内閣府男女共同参画局の発表では、2022年に全国の配偶者暴力相談センターと内閣府が主催する電話相談「DV相談+(プラス)」に寄せられた相談件数は、169981件となっています。警察庁が発表した統計でも84496件で、過去最多とのことです。さらに、9月の新聞報道によると22年に児童相談所が対応した児童虐待の件数は、219170件で過去最多を記録したとのことです。この件数には、警察が対応したDV相談で、子が父母のDVを目撃していたり、巻き込まれた場合、「面前暴力」すなわち心理的虐待にあたるとして警察が児童相談所に通告した件数も含まれています。

相談者の年齢は30代が一番多く、次いで40代、その次に50代となっており、相談の主訴は精神的暴力に関するものが一番多く約6割、身体的暴力は約3割となっています。だた、相談の現場にいると、「生活費を渡さない」「現金を渡してくれない」「買い物のたびにレシートを細かくチェックする」といった経済的暴力に関する相談も非常に多いと感じています。

被害経験の有無では、女性の約4人に1人、男性の約5人に1人に暴力を受けた経験があり、さらに女性の10人に1人が何度も暴力被害を受けています。

配偶者から被害を受けた後の行動については、「相手と別れた」のは男女ともに15.5%で、実際に別れた人は2割にもなりません。「別れたいと思ったが、別れなかった」人は男性では2割、女性では4割です。「別れなかった」理由で最も多いのは、男女ともに「子のこと」「子をひとり親にしたくなかったから」というものです。とりわけ女性では、「経済的に不安」「子を養育しながら生活していく自信がなかったから」の割合が高いです。他方、男性側の理由に「経済的不安」は挙げられていませんでした。

この結果から、DVによって被るダメージは女性の方が大きいということ、男女間の経済格差が女性をDVの環境にとどまらせる要因となっており、その意味でもDVは社会の構造的な問題であると言えます。

とは言え、「そんなに大変なのに何故、別れないのか?」と疑問に思ったり、「殴られたらフツー逃げるだろう」とあきれてしまうかもしれません。

「別れない(別れなかった)」理由の背景には、夫への恐怖心、逃げても追いかけてくるのではないかという不安、経済的な問題をはじめ離婚後の生活の見通しが立たないこと、そして子から父親を奪ってよいのかという思いがあり、それなら自分さえ我慢すれば・・・と思いがちです。そして何よりも、長年、夫から抑圧され続けてきた結果、自尊心や自己肯定感が低下し、自信が無い、無力感、人への不信感や自分の居場所はない、世の中は危険に満ちているなど、考え方の変化をはじめ、うつ病、PTSD(心的外傷後ストレス障害)、不安障害や身体化障害など精神疾患を発症したり、アルコールや睡眠薬などの依存症になったり、また、原因不明の心身の不調が長期に続いてしまうことがあります。別れるには相当な決心と覚悟が要りますが、そのためのエネルギーが奪われてしまうのです。

 このようにDVがもたらす影響はとても深刻であり、被害を受けた人のその後の人生に耐えがたい苦痛を残す危険性があります。それだけではなく、DVはその家庭内で育つ子にも深刻な影響を及ぼします。

夫婦間あるいはパートナーとの関係について、「おかしいな?」「辛い」「もしかしてDV?」と感じたら、その気持ちは正しいのです。「気づき」は解決の第一歩です。まずは誰かに相談してください。DVについて相談できる場所には最寄りの市町村役場や配偶者暴力相談支援センター、警察があります。同胞法律・生活センターでも相談機関をはじめ各種の情報提供ができますので、お気軽にご相談ください。

 (金静寅、同胞法律・生活センター副所長、社会福祉士、公認心理師)

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