短編小説「百日紅」 19/クォン・ジョンウン
2023年11月09日 09:00 短編小説「石灰が目に入ったようだ、涙がでて…」
顔をあげたヨンホは、涙を流しているヒョン・ウヒョクを見て、「お父さん!」と叫んでかれの胸に飛び込んだ。胸に顔を押しつけて両手を首にまわした。細い足が小刻みにふるえている。
「お父さん!」
ヒョン・ウヒョクは泣きじゃくるヨンホの背中をやさしくなでた。
クムニョはハンカチを顔にあててわきを向いた。
これまでにも、夫からヨンホについてはいろいろと聞いていた。しかし、このような切々とした夫の心を理解することはできなかった。
彼女は胸の傷口をかきむしられたような思いであった。そしてはげしく波うつ胸をおさえ熱い涙を流した。
どうしてこんなにも愚かであったのか、自分でもわからなかった。