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〈人・サラム・HUMAN〉東墨田町・町会長/ 石井幸夫さん(故人)

2023年09月05日 11:30 人・サラム・HUMAN

「真の友人」との再会を渇望

東京都・墨田区にある東墨田町の町会長を40余年間にわたり務めてきた石井幸夫さんには、今でも追憶する忘れられない小学校時代がある。それは、朝鮮人学生との思い出だ。

石井さんは小学校時代、墨田区にあった木下川(きねがわ)小学校(1936年創立、2003年閉校)に通っていた。木下川小の5期生だった石井さんのクラスには、皮革産業で働く親を持つ朝鮮人児童も多く在籍していた。

「小学校1年生のときから、朝鮮人に対する物凄い差別があった。朝鮮人は日本人より劣っているという考え方が普通だった」と当時を回想する石井さん。その一方で、「朝鮮人児童たちは学習面でも、身体能力面でも優秀だった。何をやってもかなわなかった」。力自慢だった石井さんは、朝鮮人児童とのある日の殴り合いの喧嘩を境に、友人の間柄になったという。

その中でも、キム・サンケイさん、ロ・ジュウカンさん、ジョウ・チンギンさん (名前は日本語読み)の3人は「真の友人」だと語る。

墨田区の町中が焼き尽くされた東京大空襲(45年)で家を失った石井さんの元に、「真の友人」が白い米の握り飯を届けてくれたという。

また、キム・スイレンさんという朝鮮人同級生の女性は命の恩人だったとも語る。

現在も町会長を務め、東京第5初中の行事への参加を地域住民に促すなど、朝鮮学校への全面的な応援を惜しまない石井さん。その根底には、石井さんと「真の友人」である朝鮮人学生との固い絆があるのだろう。

彼らの顔を今でも鮮明に覚えている石井さんは、「世界中の誰と仲良くなるよりも、朝鮮人と仲良くなったことが私にとっては誇りだ。再び出会えた時は、熱い抱擁を交わすだろう。とにかく、もう一度かれらに会って、思い出話をしたい」と、再会を渇望した。

(朴忠信)

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