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短編小説「大いなる心」15/チェ・ハクス

2023年04月06日 09:00 短編小説

「外国へだと?何をいいだすんだ」

きょうになってからはじめて顔をしかめたドンチョルは不機嫌になって反問した。

「機械をつくることはもちろんわたしたちの手でやりますよ。だけど設計図を見なければどうして…」

「そうじゃないんだ。とにかく技師長や設計部のトンムたちとよく相談したまえ。昨夜、党委員長や支配人トンムとも話しあって、近日中に従業員会議を召集することにしたんだが、目的は首相同志が提起されたことと、党が意図していること、それにわが国の実情をみんなによく理解させ、対策をたてることにある」

従業員決起大会はわきにわいた。もえるような胸のうちを、ことばでいいあらわせない労働者たちは演壇をたたいた。

パク・インソブじいさんは、木型さえ提供してくれれば、どんなに大きな素材だろうと鋳込んでみせるといった。そして年末までといわず、9・9節までに生産目標をやりとげることはもちろん、大型切削機をつくることを提議した。

設計部門の技師たちも、木型職場の労働者もこれに呼応した。

ドンチョルの職場が決起したことはいうまでもない。

ムン・ドンチョルはいそがしさに追いたてられたが、明るい見とおしにたのしくてならなかった。かれはほとんど毎日を作業現場ですごした。かれはここで労働者と協議し、指示し、結論をくだし、処理したうえで上部に報告した。その間に社宅にでかけては、突撃隊員たちの家庭をたずね、食欲をそそるような食べ物をどしどしこしらえてほしいと主婦たちにたのんだ。ときには自分でかれらの弁当を運びまわりもした。

線と数字がいっぱいの大型切削機の図案ができあがったとき、それがどのような部品でできるのか、想像するだけでも心がおどった。

期限よりも10日も早く木型ができあがったとき、かれは未来の創造物がどんな部品でできるのかと手でさわってみたりした。

美しくみがきのかかった大きな機械の各部品の木型は、芸術品といっていいほどみごとなできまえだった。

2メートルもある大型歯車をこしらえるときは自分も作業に加わった。かれは、かつてよき競争相手だったインソブじいさんと復旧建設に参加したときのように、力をあわせて手ぎわよく鋳込んでいった。

いよいよかれの職場が腕を発揮するときがきた。その大きな歯車は最終的にS機械工場に送られたが、数千個におよぶ部品と付属品は、どこにもましてドンチョルの職場で多く加工された。

ところが、数十トンもあろうという面板加工品をかかえて、それを削るだけの機械がなかった。

どんな手段をもちいてもこれだけはむりだろうと、工場の幹部たちはひどく落胆した。

ドンチョルは職場の党委員長とつれだって旋盤工たちと話しあった。

「正面盤で削ってみましょう」

チョントンムの職場の若い連中や、老練な技能工たちが提案した。

「冗談じゃない、機械がダメになっちまうじゃないか!」腕のいい連中までがこういって強硬に反対した。ドンチョルははじめにいい出した労働者たちと夜っぴで討論をかさねた。そしてかれらがたくみに削りだす手並を見とどけて、ようやく事務所へもどった。机の上には娘の書きおきと二つの弁当箱が風呂敷につつまれて、かれの帰りを待っていた。

(つづく)

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