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近年で一番の盛況ぶり、“期待感のあらわれ”/金剛山歌劇団札幌公演【詳報】

2022年10月15日 11:31 文化

金剛山歌劇団2022年アンサンブル公演「저 하늘에―あの空に―」札幌公演(主催=同実行委)が12日、北海道札幌市の札幌市教育文化会館大ホールで催された。

会場には、総聯北海道本部の丁聖漢委員長、李成銖実行委員長、総聯札幌支部の金成克委員長、札幌市の藤原広昭市議(札幌市議会日朝友好促進議員連盟会長)、北海道日朝友好連帯道民会議の井上歳郎会長をはじめとする同胞、日本の市民らが訪れ、昼・夜の2公演で延べ1500人が観覧した。

岐阜、大阪につづく巡回公演の開催地となった札幌ではこの日、開場前から長蛇の列ができるほどの盛況ぶりで、場内は、歌劇団公演を一目見ようと駆け付けた観客たちの熱気であふれていた。

女声独唱と舞踊「祖国の青い空」で幕開けした公演は、チャンセナプとソヘグム重奏「思郷歌」、チョッテ独奏「天の川と鳳凰」、独舞「パラの舞」、女声独唱「ブランコに乗る乙女」など選りすぐりの作品が舞台にあがった。とりわけ、群舞「太鼓の舞」では、9人の舞踊手たちによる一糸乱れぬチャンダン演奏に次々とアンコールの声があがり、3人の歌手たちが送る女声3重唱「ウリハッキョは私たちの故郷」は観客の涙を誘った。

また、巡回公演にあわせて創作された群舞「渡り鳥に願いを込めて」や公演のラストを飾った民俗舞踊「農楽」では、団員たちによる迫力満点のパフォーマンスに洗練された楽団の生演奏が加わり、完成度の高い作品たちに場内からは万雷の拍手が降り注いだ。計13作品で彩られた公演は約1時間半の間、観客たちを魅了した。

文化交流こそ絶やさずに

友人からの紹介で初めて公演を観にきたという田端良子さん(77)は、「前回はチケットを泣く泣く譲ったが、代わりに観た友人がすごく華やかな公演で素敵だったと感想を話していた。今日はそれを自分の目で確認しにきた」と開演前に話していた。田端さんは「歌と伝統舞踊を観るのが特に楽しみ。情勢は殺伐としていても、文化に触れることで、人々がつながることができると思う。文化交流こそ絶やしてほしくない」と思いのたけを語った。

「コロナ禍で以前に比べればイベントごとが少なくなった。そんななかで開催される歌劇団公演は、会場に足を運び公演を観るたびに、心が浄化されるような気持ちになる」

そう語ったのは李祐作さん(51、前・北海道初中高アボジ会会長)。李さんは、この日の公演を鑑賞後、「芸術の力を改めて感じるし、ハッキョの支援や北海道同胞社会の活性化のためにもこういう機会をもっとたくさん作っていければと思う」と話した。

「北海道朝鮮学校を支える会」事務局次長の松倉由美子さん(68)は「東京で過ごした大学時代から歌劇団公演を観ているのでもう40数年になる。ここ数年は在日朝鮮人が手掛けた作品も多く取り入れていて、朝鮮だけでなく在日の芸術文化のすばらしさを感じる」と語る。

昨年4月から北海道初中高のオモニ会とタッグを組んで「オモニのキムチ」という名でオリジナルキムチを販売するなど、学校支援にも尽力する松倉さん。在日朝鮮人に対するヘイトスピーチやヘイトクライムが相次ぐ昨今の日本社会に危機感を示す一方で、それを解消するには「朝鮮や朝鮮学校を知り、つながった人々が、ありのままの姿を正確に伝えていくのが一番」だと強調する。

「公演では、歌や舞踊、演奏のなかに故郷や南北統一に対する(在日朝鮮人の)思いが反映されていた。歌劇団公演というのは、普段そういうことを考えたことのない日本人が、そのような在日朝鮮人の思いについても考えるきっかけになっている」(松倉さん)

札幌公演実行委員会の李成銖委員長(61、札幌地域商工会会長)は、この日たくさんの観客が駆け付けたことに「期待感のあらわれだと思う」と朗らかに笑う。「一昨年はコロナで中止となったが、これまで札幌では何十年も歌劇団公演をあげてきた。その歴史がすごいなと改めて感じた」。

歴代の実行委員会では、情報番組での告知や新聞広告などを通じ、金剛山歌劇団の公演に対する日本の人々の認知を高めようと努めてきた。今年は、そのような実行委員会の頑張りに加え、幅広い層の同胞たちが個々に広告集めに奔走したことが功を奏し「近年で一番の盛況ぶりだった」という。

歌劇団公演が、朝鮮そして在日朝鮮人やウリハッキョについて知る貴重なきっかけになっていることに、一番の意義を感じているという李実行委員長は、「朝鮮に対しマイナスのイメージが社会の多くを占めるなかで、一度公演をみて、きれいだ・素晴らしいとなる人たちがリピーターになってくれる。今後は新規の、特に若い世代を取り込んでいきたい」と話しながら、同胞たちにとっても貴重な場だとして、こう続けた。

「社会のありようや同胞の構成も変わり、朝鮮の芸術文化を身近に触れる機会が減ったことで少なからず興味も薄れてしまっている。今後は次世代の興味・関心を引くような工夫も考えていかなくてはと思うし、だからこそ、まずは歌劇団を応援し、これからも北海道の地で公演をあげられるよう努めたい」(李実行委員長)

他方で、この日観覧した多くの日本市民らも実行委員会に感想文を寄せていた。

「感情が伝わってくる公演で涙が出るほどだった。最後の演目(農楽)も迫力があって素晴らしかった」(30代女性)

「祖国を愛する、誇る心情が伝わってきた。朝鮮と世界をつなぐ愛と平和と統一の架け橋となっていることを感じた」(60代男性)

「舞踊の動きがとてもきれいで、衣装も素敵だった。お祭りのようすを再現した踊りが特に楽しくてよかったし、もっと伝統的な舞踊をみてみたいと思った。これからも頑張ってください」(50代女性)

次回公演は、来る18日に愛知(日本特殊陶業市民会館ビレッジホール)で行われる。18時開場、18時半開演予定。

(文・韓賢珠、写真・盧琴順)

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