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核武力強化の背景と目的 ② 国家利益ねらえば「二つ目の使命」決行

2022年05月31日 15:52 軍事

米国の核先制攻撃態勢への対抗策

元帥服をまとった金正恩総書記の4.25閲兵式演説は世界に衝撃を与えた。朝鮮の核武力の基本使命に関する新たな決断が表明された。

戦争抑止・報復とは異なる使命

金正恩総書記は、我々の核武力の基本使命は戦争を抑止することにあるが、この地で我々が決して望まない状況がつくられるまで我々の核が戦争抑止という一つの使命だけに縛られるわけにはいかないとしながら「いかなる勢力でもわが国の根本利益を侵奪しようとすれば、我々の核武力は意外な二つ目の使命を必ず決行しなければならなくなる」と言明した。

金正恩総書記は、4.25閲兵式演説で核武力の「二つ目の使命」について言及した。(朝鮮中央通信=朝鮮通信)

「意外な二つ目の使命」とは何か。

2013年、経済建設と核武力建設の並進路線が示されたのに続き、最高人民会議で「自衛的核保有国の地位を強固にするための法」が制定された。法律では、朝鮮の核兵器は米国の敵視政策と核脅威に対処するために、やむを得ず保有した正当な防衛手段であり、朝鮮の核武力は、朝鮮に対する侵略と攻撃を抑制・撃退し、侵略の本拠地に対する報復打撃を加えるのに服務すると規制している。

戦争抑止と報復打撃が明記され、先制打撃の言及はない。報復打撃に対しても、法律では敵対的な他の核保有国が朝鮮を侵略・攻撃する場合、それを撃退し報復打撃を加えると規制した。

4.25閲兵式演説では、戦争抑止と報復打撃ではない、もう一つの使命が言及された。

その使命が決行される条件は従来と異なる。報復打撃は侵略や攻撃が加えられた場合に決行されるが、二つ目の使命は朝鮮の根本利益に対する侵奪の兆候が確認される場合に決行される。そして敵対的な他の核保有国だけでなく、いかなる勢力でも国家の根本利益を侵奪しようとすれば、その対象となる。

侵略性が増す米国の核ドクトリン

朝鮮の交戦国である米国は、朝鮮を核先制攻撃の対象にしている。

米国は朝鮮の核武力を「世界平和に対する脅威」と断定するが、そもそも朝鮮を核武装へと追いやったのは米国だ。

2006年、朝鮮は「米国の反共和国孤立圧殺策動が極限点を超え最悪の状況をもたらしている情勢下で、我々はこれ以上事態の推移を傍観できなくなった」(朝鮮外務省声明)として初の地下核実験を断行した。

2013年、朝鮮が経済建設と核武力建設の並進路線を示したとき、米国は世界支配のための戦略的中心をアジア太平洋地域に移し、朝鮮を一次的な攻撃目標とした。朝鮮の人工衛星打ち上げを国連安保理制裁の対象にして人為的に緊張を激化させ、それを口実に膨大な戦力を投入して大規模な米南合同軍事練習を絶えず繰り広げた。

国家核武力を完成した朝鮮は、2018年に並進路線の課題が貫徹されたことを宣言、核兵器のない世界を建設することに資する立場から、核実験と大陸間弾道ミサイル試射を中断する措置を講じた。しかし米国は応えなかった。 その年に始まった関係改善と非核化のための朝米対話が成果なく中断することになった責任も米国側にある。

米国は実際に使用することを前提として威力を弱めた核兵器を配備している。昨年10月、米国防総省はF-35Aステルス機でB61-12戦術核爆弾を投下するテスト映像を公開した。B61-12は核威力を0.3~340キロトンまで調節することができ、飛行中の誘導システムを搭載している。

今なお米国は朝鮮を核武力強化へと追いやっている。朝鮮を標的にした米国の核ドクトリンはその攻撃性・侵略性が増している。

バイデン政権が今年3月に発表した「核態勢見直し(NPR)」報告書には「極端な状況(extreme circumstances)」で、米国と同盟国・友邦国の核心的利益の防御のために核兵器を使用するという内容が盛り込まれた。 「核の先制不使用(No first use)」と核兵器の使用を核攻撃に対する反撃に制限するという「唯一の目的(sole purpose)」に関する構想が取りざたされていたが、結局は採用されなかった。

新冷戦構図が深まり、ウクライナ紛争の勃発で国際的な安全保障環境が揺れ動く中で発表された同報告書は、核を基本手段として覇権主義政策を強行しようとする米国の野望に変化はなく、米国が誇示する核武力の侵略的使命は決して変わらないことを示している。実際、米国は核攻撃を受けなくても自らが「極端な状況」にあると認めれば、核先制攻撃を決行するという核ドクトリンを担保するための戦術核兵器の増強を進めている。

SLBMトライデントIIに搭載されるW76-2も低出力核弾頭だ。 威力は5キロトンと推定される。
広島型原爆の威力はTNT火薬16キロトンに相当する。

現実的に存在する脅威を抑制

米国の政府と軍部は「核抑止は核兵器の使用を前提とする」と公言してきた。

核戦争脅威を伴う米国との長期的対決が避けられない条件下で、朝鮮は米国の侵略的な核ドクトリンに対しても相応の強度で対抗策を講じている。

朝鮮をめぐる安全保障環境は激変している。1953年の停戦協定締結後、朝鮮半​​島では大規模戦争は起こらなかった。周辺大国の利害が一致する「限定的相互抑止」が機能すると考えられてきた。しかし、中小規模の軍事的挑発行為が抑えられたわけではなく、実際に軍事境界線や西海上で武力衝突が起きた。

大国の葛藤と対立が激化し、米国の侵略的な核ドクトリンが公になった今、朝鮮半島における不測の事態が全面戦争、核戦争に拡大しないという保証はない。

朝鮮は、今そこにある軍事的リスクに対処し、核抑止の実効性を高めている。

一旦、戦争状況になれば、その初期に主導権を掌握し、相手の戦争意志を砕き、長期戦を避けて自らの軍事力を保つために、核戦闘武力を動員するという決断もすでに明らかにした。(金与正・党中央委副部長の談話)

そして、現実的に存在する懸念と脅威を安定的に抑制する力と手段、すなわち世界の軍事技術発展の先端をいく戦略戦術兵器システムの整備に拍車をかけている。

(金志永)

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