〈告発から45年~裴奉奇さんが伝えたこと〉遺志を継いだ南市民らの活動


戦争のない平和な世界を

93年3月に日本軍性奴隷制被害者であることを公表してから、性暴力問題解決のため人権運動家として活動した金福童さん(享年93歳)。かのじょの没後、南朝鮮の市民らによって「金福童の希望」が2016年に立ち上がった。

「金福童希望学校」2期・第1回「金学順と金福童の生涯」の参加者らによる集合写真(2021年6月4日)

「日本軍『慰安婦』問題解決のため最後までたたかってほしい。在日朝鮮学校の支援を任せるから熱心にやってほしい」―。自身が十分に勉強できなかった「恨」を晴らし、在日同胞の子どもたちが差別のない社会で学べるようにと願った金さんの遺志を継ぎ、戦争と差別のない社会を目指そうという趣旨で、これまで朝鮮学校生徒たちへの支援事業などさまざまな取り組みを行ってきた。

注力する事業として「金福童の希望学校」がある。日本軍性奴隷制問題に関する次世代への教育の場を設け、問題の解決に向けた連帯と運動の方向性を共有。ほかにも「私は希望をつかんで行く」という金さんの言葉をテーマに「平和の少女像」設立10周年を記念した展示会を南の国会で催すなど(2021年)、教育やアート、集会といった多角的な視点からこの問題に切り込み世界に発信している。

2022年現在「金福童の希望」では12カ国19の海外市民団体と連携を結んでいる。いずれも日本軍性奴隷制問題をはじめ戦時中の性暴力に反対し、被害者の尊厳を取り戻すために活動している団体だ。今年の国際女性デーに際してはオーストラリア、ニュージーランドの団体との共同主催で、映画「ナヌムの家」の上映会を行うなど、コロナ禍においても交流を続け、連帯を深めている。

共同代表のキム・ソギョンさんは「日本軍性奴隷制問題が明るみになった1990年代から、ハルモニたち自身による活動とそれに賛同する市民らの声によって、社会の関心を呼び起こすことができた」と話す。一方で「2020年からは極右勢力の攻撃によって運動が下火になった面もある」という。

2012年9月、生野初級を訪問し授業を参観する金福童ハルモニと尹美香・国会議員(前「金福童の希望」共同代表)

2015年の日本と南の政府による「慰安婦合意」に力を得た極右勢力は、声を上げる市民らに対し「アカ」のレッテルを貼って運動を妨害。また、「金福童の希望」の共同代表であった尹美香氏が国会議員に当選して以降は攻撃を激化させ、毎週行われる水曜デモに訪れては参加者らに罵声を浴びせている。

「それでも、ハルモニたちの願いを受け継いだ私たちが活動を止めるわけにはいかない」。キム・ソギョン共同代表はいう。「日本政府による公式の謝罪と被害者への賠償、真相究明、再発防止措置が最重要課題である」と。さらには「在日同胞に対する差別の解消と朝鮮半島の統一も問題解決の要だ」と力を込めた。

「生前、ハルモニたちは言っていた。『(自分たちは)許す準備ができているのに謝罪してくる人がいない』と。日本政府が反省しない限り問題はいつまでも解決しない。偉大な運動家であるハルモニたちが描く「平和な未来」を実現するため、私たちはこれからも性奴隷制問題の解決と在日同胞に対する差別解消を成し遂げ、平和な世界をつくるための道を歩んでいく」(キム・ソギョン共同代表)

「金福童の希望」ではこれから、戦時中の性暴力を記憶し、平和への思いを次世代に継いでいく展示施設「金福童希望センター」の設立に向けて活動を広げていくという。

(金紗栄)