〈告発から45年~裴奉奇さんが伝えたこと〉性差別撤廃部会の活動


自分事としてのアクション

今年8年目を迎えた「日本軍性奴隷制の否定を許さない4.23アクション」

晩年の裴奉奇さんが、金賢玉さんに話していた、とある思いがある。

「仇を取ってほしい」―。この言葉について、長年裴さんに寄り添った金賢玉さんは「朝・日問題を解決してほしい」という次世代たちへ託した裴さんの願いだと解釈する。

そんな裴さんの思いを継承するため、在日朝鮮人女性らを中心に始まった活動が今年8年目を迎えた。「日本軍性奴隷制の否定を許さない4.23アクション」(主催=在日本朝鮮人人権協会 性差別撤廃部会)だ。

「4.23アクション」は、祖国解放後、日本軍性奴隷制による被害を朝鮮女性として初めて明かした裴奉奇さんの証言が本紙に掲載された4月23日(1977年)に際し、その存在と、日本軍性奴隷制の被害を受けたすべての人びとを記憶していくため、2015年にスタートした。

10代から30代まで、次世代の同胞たちによって年々活発化しているこの活動だが、今年4月のアクション当日、マイクを持って被害女性たちの証言を朗読するメンバーのなかに、鄭和瑛さん(27)の姿もあった。

マイクを持ち証言を朗読する鄭和瑛さん(右)

鄭さんは、同部会に留学同活動の一環で大学時代から参加しており、21年1月からスタッフを務めている。2015年に「南・日慰安婦合意」があった頃、合意に反対する抗議行動に参加するも、当時はまだ「自分事になっていなかった」という鄭さん。そんななか、部会に参加する先輩たちが「問題意識を持った主体性のあるアクションをしていること」に感銘を受けた。それが、この問題を積極的に追及するきっかけになった。

活動に参加しながら鄭さんが強くする思い。それは「『慰安婦』問題が実は身近な問題だという感覚が多くの人々のあいだで抜け落ちている」ことだという。

「過去の歴史や、女性だけの問題といった観点で見られがちだが、例えば、女性への偏見や性の役割など、日常のささいなことが性暴力につながると考えれば、すべての人にとってより身近な問題になるはずだ」(鄭さん)

一方、同時期から部会のスタッフとして活動する李有実さん(35)も、ひょんなことから活動に携わることになった。あるとき、李さんが、同部会で行われたアンケート調査に答え、その過程で「ジェンダー・フェミニズムを通じて社会をみる視点を持つようになり、自身の悩みとも正面から向き合えるようになった」という。

部会のスタッフとして活動する李有実さん

悩みを共有できる場の存在は、その後「トラウマを抱えながら生きる人々をだれも置いてきぼりにせず、寄り添いながら生きたい」という日本軍性奴隷制問題や在日朝鮮人運動への視点にもつながる揺るぎない思いを抱かせた。

「性奴隷制問題は強制連行の一つ、植民地支配の結果であることを知ってはいたが、今思えば部会に携わるまで、自分の問題として考えてはいなかった。しかし活動を重ねていく過程で、まずはこの歴史的事実に対する否定論に反対の声をあげない限り、いま目の前にある自分の問題も解決しないと、切実に思った」(李さん)

鄭さんと、李さんが日本軍性奴隷制問題を「自分事」としてとらえるようになるきっかけはそれぞれ異なる。一方は、現代の課題から過去の歴史に接近し、もう一方は、過去の歴史から入り、現代の課題に向き合うようになった。この問題の当事者は誰なのか、そして解決とはいったい何を意味するのか。二人はいう。

「日本人と日本政府が加害側の当事者であるのは大前提だが、現代にある性差別ともつながるこの問題に無関係な人はいない。その点、皆が当事者だと思う。社会的弱者となる女性の問題、また歴史的な『慰安婦』問題の解決なくしては、よりよい同胞社会、そして民族の発展と解放もありえないと思う。この前提をあらゆる同胞たちと共有することが、日本軍性奴隷制問題解決への糸口だと考える」(鄭さん)

「被害当事者、植民地支配の被害者、在日朝鮮人、女性など属性を共有するすべての人々が日本軍性奴隷制問題の当事者だ。被害者の声を受け止めて、自分の生活とどのような接点があるのか、かつて被害を生んだ社会構造が自分たちの生活にどのような影響をもたらしているのかを考える。そうすることで、二度と同じ加害を繰り返させない。そして民族差別と女性差別を共に考える視点、現代の誰もが被害者にも加害者にもなりえる現実と向き合う必要があると思う。日本軍性奴隷制問題の解決は『真に平等な社会の入口に立つこと』にすぎない」(李さん)

(韓賢珠)