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〈それぞれの四季〉「きせき」/李京柱

2020年10月07日 11:35 コラム

いざ聞かれると答えられないことは多い。有名なものは昨日の夕飯は何だったか。他には自分の家の屋根の色とか。私にはもちろんわからない。しかし校舎の隣にある文化会館(体育館)については答えることができそうだ。

9月初旬、排水溝の詰まりを取り除くためにそこに登った。校舎の5階からやっと見ることができる高さ。そこから地面を見下ろすと足がすくんだ。でも一人ではなかった。管理部長と呼ばれている曺在勲先生と一緒に。

3年前にも一度登ったことがあったが、そのときと先生の様子は違っていた。この2年のうちに足を悪くされ、不安定な足場を5、6歩進むと腰を下ろして休まれた。その一歩一歩を踏み出すごとに緊張が走った。

自分が生徒のころから先生はいらっしゃった。いくら古くても校舎が綺麗に見えるのは、毎朝欠かさず掃除をなさる先生のおかげだ。恵まれた環境とは決して言えないが、あるものを大切にする。それがウリハッキョだ。

詰まりを除き終え、来た道を戻る。ゆっくりと、確かめるように進めるその一歩一歩が、ウリハッキョの歩みのように感じられた。

今にも雨が溢れそうな空模様だったが、赤い屋根の上で吹く風に背中を押されたように思えた。その理由を聞かれても答えられそうにない。でも、これについては考える必要もなさそうだ。(大阪市在住、教員)

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