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〈教室で〉東京朝鮮第4初中級学校 初1 図工 金順玉教員

2013年06月03日 15:21 民族教育

五感を刺激、表現力を伸ばす

「砂遊び」

 

子どもたちは砂遊びに夢中になった

子どもたちは砂遊びに夢中になった

5月22日、東京朝鮮第4初中級学校(東京都足立区)初級部1年の図工を見学した。入学式から約2ヵ月。1年生たちは少しずつ新しい環境に慣れ始めた頃だろうか。

金順玉教員(36)は、子どもたちに「今日は『モレノリ(砂遊び)』をします」と話した。早速砂場で何を作ろうかと話し始める子どもたち。

教室から砂場へ移動すると、金教員は「自由に山を作ってみよう」と呼びかけた。ルールは、「石や枝を使わないこと」。17人の子どもたちは、それぞれ好きなようにチームに分かれて作業を進めた。

「ナーたちは、おきもとじどうかんチーム!」と、チーム名を名乗る子どもも。どうやら放課後、児童館の学童クラブで過ごす子どもたちのグループのようだ。

金教員は、思い思いに砂山を作る子どもたちに「手だけじゃなくて、足も使ってごらん」と声をかける。そして、「ソンセンニム(先生)は、白頭山~」と歌うようにつぶやく。傍にいた子どもたちは次々に「ナヌン(私は)チリサ~ン(智異山)」「ふじさん」「エベレスト」「クムガンサン(金剛山)」と知ってる山の名前を口ずさむ。

一通り、山ができると、トンネルを掘り始めた。

「トンネルの作り方、知らないトンム!」

金教員が声をかけると、「イェッ!」と5人の手が上がった。コツを教わり、山の麓を掘り始めると…「うぁ~! つながったぁ~!」と歓声が上がる。一つの山に4つのトンネル…しかし、貫通の喜びも束の間、あっという間に山が崩れ落ちてしまった。

「こわれたら、また作ればいいよ」とある男児。その言葉に救われて、「崩落」チームはせっせと砂山作りに取り掛かる。

一方、山と山のトンネルをつなぐ「道」を作ったところに、金教員が水を流し込むと、再び子どもたちの歓声が沸きあがった。

「つぎは、これと、これをつなげよう!」

子どもたちのイメージはどんどん膨らむ。大急ぎで道を作る子、道作りに気を取られてトンネルを埋めてしまう子、流れていく水を観察する子などさまざまだ。

授業が終わると、どの子も名残惜しそうに砂場を去っていった。

 人は「表現する生き物」

1976年生まれ。千葉初中、東京朝鮮中高級学校、朝鮮大学校師範教育学部美術科卒業。千葉初中、東京第2、第6、第9、福島初中を経て、東京第4へ。初1図工、中3美術、特別支援クラス担当。中3副担任。

1976年生まれ。千葉初中、東京朝鮮中高級学校、朝鮮大学校師範教育学部美術科卒業。千葉初中、東京第2、第6、第9、福島初中を経て、東京第4へ。初1図工、中3美術、特別支援クラス担当。中3副担任。

金教員は毎年、初1一学期の授業で「砂遊び」を取り入れている。五感を刺激し、子どもたちの「人との関わり方」を観察するのも授業のねらいだ。「群れる子と、群れない子、それぞれ個性がある。学級づくりに置いて個性を知るのは大切だ。今年は思い通りに作品ができなかったり、他の子に壊されたと泣く子が1人もいなかった。自分の作品が壊れても、『作り直せばいい』と切り替えられる発想の良さも見せてくれた」と微笑む。

「五感をフルに使って、自由に、のびのび表現活動をし、その楽しさを知ってもらいたい」との思いが、金教員の授業を貫いている。

子どもを取り巻く環境が大きく変わりつつある中で、金教員は「全く同じ授業をしたとしても、10年前と今とでは子どもの反応が全然違うだろう」と指摘する。

「携帯電話の普及による情報過多は、子どもたちの、遊びを通して培われる『考える力』や『工夫する力』そして『創造力』を希薄化させてしまっている」

だからこそ、金教員は、授業を通して、砂に触れる、ビー玉で遊ぶ、風船を膨らませる、紐を編み込む、折り紙を折ると言った、現代っ子たちの間で低下しつつある手先の機能を高め、遊びの中で創造力を育てていきたいと考えている。

美術教員になって16年。たくさんの子どもと出会い、作品を通して自分自身の「子どもに対する姿勢」も変わってきたと話す。

彼女に「子どもの表現力の素晴らしさ」を見せつけた作品には、特別支援クラスの児童の作品もあった。

「人は、何かを表現する生き物だと感じた」と、金教員は、当時の衝撃的な作品との出会いを振り返る。大学卒業後、千葉朝鮮初中級学校、東京朝鮮第2初級学校、東京朝鮮第6初級学校、東京朝鮮第9初級学校、福島朝鮮初中級学校で教鞭をとり、赴任した先々で自閉症や学習障害、ダウン症、身体障害児、ADHDなど、サポートを必要とする子どもたちとも触れ合った。教育者として、それらの子どもとどう向き合えばいいのか。その手立てを探りたい一心で、障害児の学習指導教室やリトミックに通い、脳性麻痺の成人を対象とした絵画教室にも足を運んだ。「表現」することは、方法こそ違えど、どんな人にでも共通するものであったと言う。

「美術を通して、これからもたくさんの人と出会っていきたい。教員と学生としてではなく『対人間として』。幼い人との心の触れあいを重ねていきたい」と静かに語った。(文 金潤順、写真 盧琴順)

 

〈私のひと言〉 「一人六役」、頼れる存在

金順玉教員は、真面目で細やかな心遣いのできる頼れる同僚だ。昨年に続き、今年も中3担任、副担任という間柄で、僕とは二人三脚でクラスを引っ張ってくれている。

わが校では毎年、運動会を控えて少年団の主催で「クラスの旗」コンテストを開催している。昨年は、受け持ちの中3が見事、優勝を果たした。少年団員と教員たちの投票で選ばれた優勝は、子どもたちにとって大きな励みとなり、卒業式までその喜びを語っていたほどだった。金教員は旗の制作を通して、生徒たち一人ひとりと深く関わり、子どもたちがクラスへの愛着を深めるのに一役買ってくれた。中3副担任に加えて、中級部集団長、中級部舞踊部生活指導、初1図工、中3美術、特別支援クラス担当と、「一人六役」の多忙な教員生活を送る中でも、仕事は正確。中級部の活動全般がうまく回るよう、細かい配慮を怠らない姿勢には頭が下がる。これからも協力し合って、子どもたちと共に楽しい学校生活を送っていこう。(中3担任、金正敏教員)

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