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安保法成立、集団的自衛権行使の持つ危険性

2015年10月09日 18:41 朝鮮半島

高まる朝鮮半島での戦争危機

朝鮮問題専門家・北川広和氏に聞く

自衛隊法など10の法律を一部「改正」した「平和安全法制整備法」と、自衛隊の海外派遣に関する「国際平和支援法」(新規制定)で構成された「安全保障関連法」(いわゆる「平和安全法制」、以下安保法)が9月19日、6割を超える反対世論を押し切って成立した。「戦後最大の安全保障政策の転換」といわれる今回の事態によって、朝鮮半島での戦争危機は格段に高まった。この問題に関して、朝鮮半島情勢に詳しい北川広和氏(62、「日韓分析」編集)に話を聞いた。(金里映)

際限ない米軍支援可能に

北川広和氏

北川広和氏

安保法の柱は、集団的自衛権の行使容認と、自衛隊による米軍への軍事支援拡大である。

集団的自衛権の行使容認によって、これまで武力の行使は日本が直接攻撃を受けた場合に限定されていたが、今後は日本が攻撃を受けていないにもかかわらず、海外で武力を行使できるようになった。また「周辺事態法」を「重要影響事態法」にしたことで自衛隊活動範囲の地理的制約は取り払われ、地球の裏側であっても米軍支援が可能になった。

「安保法が成立したことで、米軍の要請に基づいて自衛隊が世界のどこへでも行けるようになった。そこで一番の焦点となっているのは、自衛隊の朝鮮半島への派兵だ」と北川氏は分析する。

安保法成立は、米国の要請の下で周到に準備されてきた。

今年4月27日、日米安全保障協議委員会(2+2)で新たな日米ガイドライン(「日米防衛協力のための指針」)が確定された。翌28日に行われた日米首脳会談で安倍首相とオバマ大統領は、日米新ガイドラインに沿って日米同盟の「抑止力」を強化していくことを確認した。米議会で演説を行った安倍首相は、安保法案を「この夏までに成就させる」と宣言。安倍首相が米国で交わしたこの「約束」に沿って、5月には安保法制を整備することに関する閣議決定が強行された。

近年軍事費を大幅に削減している米国は、台頭する中国をけん制し、アジアにおける影響力を確保したい考えから、日本に再軍備を求め、世界各地の戦争や紛争で自衛隊が米軍に全面協力できる体制をつくろうとしていた。カーター米国防長官は「自衛隊は高い能力を持っており、アジア地域および世界で米軍を支援するようになる。それはとても好ましいことだ」(今年4月28日の記者会見)と述べたが、この発言からも自衛隊が世界各地で米軍と共に活動してくれることへの期待がにじみ出ている。

侵略戦争の先鋒隊に

これまで、米軍の後方支援における自衛隊の役割は、紛争地域から離れた後方地域での輸送と補給などに限定されていたが、安保法が成立したことによって、今後は自衛隊が戦闘現場と近いところまで入り、後方支援ができるようになった。「戦闘が実際に行われていない地域」であれば後方支援ができる。

安保法制に反対する国会前デモのようす(8月30日、金里映撮影)

安保法制に反対する国会前デモのようす(8月30日、金里映撮影)

朝鮮半島有事では、戦闘に参加する米軍に対し日本が米軍戦闘機に空中給油をし、弾薬や装備の輸送などもできるようになった。また、公海上での機雷の除去や、米艦の防衛などを自衛隊が行うことも可能になった。北川氏は、「自衛隊が米国の侵攻作戦の先鋒隊になるということだ」と話す。

北川氏は安保法が成立したことによって、米国を頂点とした日・米・南三角軍事同盟が実質的に完成したと指摘する。このため、朝鮮半島有事に自衛隊が集団的自衛権を行使して朝鮮半島に派兵することも十分考えられる。

過去に侵略戦争を起こした日本が再び朝鮮半島に上陸することは、再侵略への道を開くことにつながる。「韓国の外交部・国防部は韓国(政府、大統領)の同意なくして自衛隊を朝鮮半島に派兵することはできないと主張しているが、その決定権は韓国軍の戦時作戦統制権を握っている米軍にあって、韓国側にはない。36年間朝鮮を植民地支配して、戦後70年間謝罪も償いもしてこなかった日本の軍隊が、『訓練』などと称して再び朝鮮半島に上陸するかもしれない状況は、朝鮮からすれば非常に恐ろしいものといえる。『訓練』がいつ侵略戦争に転換してもおかしくないからだ」(北川氏)

日本と米国は安保法成立前からすでに、「朝鮮半島有事」を視野に入れた具体的な戦争準備を着々と進めていた。

8月31日から9月9日にかけて、自衛隊と米軍およそ4000人が参加する大規模な上陸訓練が米カリフォルニア州で行われた。自衛隊は陸海空総計1100人のかつてない大部隊が参加した。 

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