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〈高校無償化〉愛知で適用求め国賠訴訟、「子どもたちの権利を守り抜く」

2013年01月26日 14:54 民族教育

訴状を提出するため名古屋地裁に向かう愛知朝鮮学園関係者、弁護士ら

「高校無償化」制度から朝鮮学校だけが除外されている問題で、愛知朝鮮中高級学校の在校生、卒業生ら5人は24日、日本国を相手取り、慰謝料の支払いを求める訴訟を名古屋地裁に起こした。原告側は、法の下の平等を定めた憲法14条に反し、就学支援金の支給対象から朝高生が除外されたことによって精神的苦痛を強いられたと主張している。訴状提出後、朝鮮学校関係者、弁護団、日本人支援者が記者会見を行った。

司法の場で、問題解決を

原告となったのは、愛知朝高在校生2人と制度施行当時(2010年度)に在籍した卒業生3人。

弁護団の内河惠一団長は訴訟に踏み切った経緯について、「高校無償化」制度施行以降に起きた様々な政治動向の中で、問題はさらに消極的な方向に進んだとしながら、「政治ではなく、司法の場で問題を解決しようという決断に至った」と強調。「外国籍も含め、日本に暮らす子どもたちに不平等があってはならない。外交や歴史認識など様々な問題があるが、子どもたちの権利を守るという一点に力点を置いて裁判を進めたい。究極の人権問題と思い、取り組んでいく」と述べた。

裵明玉弁護士が、訴訟内容の概略を述べた。

訴状を提出した後、記者会見する愛知朝鮮学園関係者、弁護士たち

裵弁護士は今回の裁判について、朝高生らが制度から排除されたことによる精神的苦痛を国に訴えるものだと強調しながら、「あくまで慰謝料請求であり支援金相当額の請求ではない。(原告である)子どもたちは、損害賠償金と言う形での就学支援金支給ではなく、国が差別をやめた上で、すべての朝鮮学校生徒たちに支給されることを一番の目標に掲げている」と話した。また裁判について、「外国籍の子どもであっても、憲法14条によって平等権が保障されている。国の行為を違法ととらえ、子どもの人格権、学習権の侵害として訴えていくことを主軸にして進めていきたい」と語った。

会見ではまた、原告たちの思いをまとめた書面が読み上げられた。

原告たちは、署名活動や街頭宣伝など適用に向けて行ってきた様々な活動に触れながら、日本政府が朝鮮学校を排除したことで受けた悲痛な思いを吐露した。ある在校生の原告は、「私たちはスパイでも工作員でもありません。かつての日本国による植民地支配の負の遺産です。母国の言葉、歴史や文化を学ぶ権利は、誰にでもあるのに。朝鮮学校の学生たちは日本の政府により、何度も大切な気持ちを踏みにじられました。決して許せません」と心情を綴った。

また、愛知中高の教職員、オモニ会、学生委員会、学校法人愛知朝鮮学園理事会が連名で発表した声明が読み上げられた。声明では、制度施行にあたり、日本政府が朝鮮学校に対して政治外交上の問題を理由に行ってきた理不尽な対応により、生徒、保護者、関係者の受けた悲痛な思いが言及された。また訴訟を通して、日本政府の行為の違憲性、違法性を説いていくことが強調された。

さらに、「朝鮮学校にも差別なく無償化適用を求めるネットワーク愛知」による声明も発表された。声明は、「原告はまだ、自分のこれからの人生を一生懸命に考えていかなければならない若者たちだ。私たち大人が、そして日本社会が、彼・彼女たちにこのような『試練』を与えることになったことを、非常に重くそして悔しい思いで受け止めている」「日本社会には、朝鮮学校で学ぶ権利を保障する義務がある。正義は朝鮮学校と適用を求める私たちにあると信じている」と指摘した。

その後、質疑応答があった。下村文科相の「国民の理解が得られない」という発言に対し、学校側はどのように理解を求めていくのかという質問に対し、「ネットワーク愛知」の山本かほり事務局長は、「朝鮮学校は日本の一条校ではないのだから、(教育内容に)違いがあるのは当たり前。違いを認め合おうとしない、社会自体に問題がある」としながら、「マイノリティーであっても自分のルーツを確認するための教育を受ける権利がある」と強調した。

(周未來)

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