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ニョメン・オーガナイジング③「呼び方」で考える思考の転換点/ 文・イラスト 張歩里

2024年07月04日 10:25 論説・コラム ニョメン・オーガナイジング

オモニの名は?

数年前、子どもたちが保育園ごっこをしていた時のことだ。

「保育士役:〇〇ちゃん!」「園児役:はい!」という保育園生活の中で欠かせない点呼のあれである。

突然、保育士役をしていた長女が私にも「〇〇(姓)オンマ〜」と呼ぶのである。

「!?」

もしかして、うちの子どもは私の名前を「オンマ」と思っているのだろうか? そういえば意識的に自分の名前を教えていなかった。「オンマ」という特定のカテゴリーに入れられることにこんなにも無自覚になっていったとは!

しかし考えてみれば自分も、ハンメやオモニが周りにどのように呼ばれ、一人の女性としてどう歩んで来たのか、関心すら持てていなかった。あくまで「母」「妻」の役割として生きるかのじょらしか知らない…。ぞっとして、猛反省した。その日から私は子どもたちに「親にも大切な人生がある」というメッセージとして、ちゃんと自分の名前を教え、アッパにもハンメにも「名前」があることを教えている。何よりも「自分が自分である」という実感があってこそ、子どもがその子らしく成長していく過程を支援できると思っている。そう、家族であっても名前を奪ってはいけないのだ。

オルシン呼称問題!?

改めて「呼び方」ひとつに役割、意味、感情があることに気付く。

呼び方は相手に対する態度にも影響を与える。たとえば男性同胞の会話で、年配方は配偶者のことを「チプサラム(家内)」、若年層は「嫁」や「奥さん」と呼んでいる様子をよく見かける。言葉そのものに悪い意味はなくても、そういう言い方が不自然に思えなければ同胞社会の認識も変わらないのではないか。

日本の保育園に子どもを通わせている私は、近所では「〇〇ちゃんママ」と呼ばれている。しかしニョメンでは決して「〇〇のオンマ」とは呼ばれない。お互い名前で呼ぶし、「オモニ」という役割を押し付け合ったりしない。70代であっても30代でもそれぞれの名前を呼び合う。しかし、ニョメン活動を始めてすぐ悩まされたのがオルシンの「呼称語」(相手に呼びかけるために使用する言語表現)問題である。

私が育った田舎では、ニョメンの常任活動を退いたオルシンは全員「コムン(顧問)」と呼ばれていた。だからとりあえずオルシンは全員、名前の後に「コムン」と付ければ失礼はないものだと思っていた。しかし「顧問」もれっきとした役職、全員対応の「呼称語」ではないそうだ。では何と呼べばいいのだ!? ウリナラではその場合「ソンセンニム(先生)」だが、先生という言葉は権力性をはらんでしまうので、避けたいところである。韓国でよく使われる「〇〇ニム」や「〇〇氏」も文化的な土壌が違うためしっくりこない。結論、ニョメ友の諸先輩たちは「オンニがいいんじゃない?」と言っている。「オンニ」という呼称を使えるくらい親密になればいいということか…。「まだまだ若輩者、日々精進してまいります!」という感じで受け取った。

たかが言葉、されど言葉

昨年のニョメン学習会で、解放直後のとある「朝連」支部婦女部では、創氏改名のみならず、結婚・出産後に「〇〇宅」「〇〇オモニ」と呼ばれ名前を奪われた女性たちが、「本名」を取り戻す「名簿作り」という活動がなされていたことを知った。「呼び方」一つで理由付けされ、役割が決めつけられる葛藤を、運動が克服すべき課題として捉えていたニョメンのスーパー先輩方、かっこよすぎである!

私もニョメンの出会いを通して、自身の日常を改善する必要性を感じたし、自分とは違う誰かのことを想像し、柔軟な姿勢で接することを学んだ。どうしても同じ世代の女性の場合、結婚の有無、子どもの有無、仕事の有無によって立場が異なり、その三つの要素を「掛け合わせた」結果、似通った人たちが集まりやすいものである(男性の場合そんな「掛け合わせ」関係なく、同質性を保持できる仕組みが整っている)。それは居心地がよく、時には頼もしいものであるが、世界が狭くなってしまう可能性も否めない。

ニョメンでは、経験者と未経験者が縦にも横にも自由に重なり合う土壌があるし、社会的弱者として物事を重層的に考える機会も多い。「呼び方」なんてそんな些細なことと思う人もいるだろう。でも言葉は積み重ねられてきた脈略のなかに意味があるし、力関係も作用したりする。なんとなく使っている言葉が自身の思考パターンを作っていて、いつの間にか誰かを傷つけている側になっているかもしれない。「呼び方」ひとつとっても、私たちの運動は思考の転換点を迎えているのかもしれない。

(関東地方女性同盟員)

※オーガナイジングとは、仲間を集め、物語を語り、多くの人々が共に行動することで社会に変化を起こすこと。新時代の女性同盟の活動内容と方式を読者と共に模索します。

(朝鮮新報)

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