〈取材ノート〉朝高卒業式に参加して
2012年03月14日 10:36 コラム茨城朝鮮初中高級学校の卒業式(3日)に参加した。母校以外の卒業式に参加するのは初めて。
今年度の卒業生たちは、東日本大震災から1年間、学校の最上級生として後輩たちを温かく見守ってきたという。余震が続く不安な生活の中でも、後輩たちをいつも笑顔で支えてきた。その姿が被災地の同胞に大きな力と希望を与えた。
卒業式の日、初級部の女子が「離れたくない」と言わんばかりに、卒業生の元に駆け寄り抱きついた。その様子を見て目頭が熱くなった。寄宿舎がある初中高級学校ならではの家族のような温かい絆があることを肌で感じた。
しかし、こうした温もりを奪い去ろうとする者がいるから許せない。
今年度の卒業生もまた、「高校無償化」制度が適用されずに巣立っていった。
水戸市は同校に対するわずかばかりの補助金さえ、「拉致事件解決のめどが立つまで」を口実に全面停止した。「学びの文化を世界遺産に」との同市の提案が虚しく聞こえる。この流れは日本各地に広がっている。「高校無償化」制度から朝鮮学校を除外しているこの不当な差別政策は、偏見を増幅させ、さらなる差別を生んでいる。
外国人が増加する日本では、多文化多民族共生が求められている。それを街づくりの標語に掲げる自治体も多い。しかし、在日朝鮮人が受ける差別の実態からすると、あまりに空虚だ。
他の民族や文化、異なる価値観を認め尊重できてこそ、心豊かな人材を育て、真の国際社会を築くことができる。(炯)