〈時代を視る 5〉米国の「人道的介入」に抗する闘い/林裕哲
2019年07月26日 14:11 主要ニュース 対外・国際ベネズエラ情勢の背景と展望
20年間の敵視圧殺政策
ベネズエラは深い霧に包まれているように見える。カリブ海と北大西洋に面し、石油をはじめ世界有数の地下資源の宝庫であるこの国は、20世紀以降、米国のラテンアメリカ支配において欠かすことのできない重要なピースであり続けてきたが、1999年に新大統領ウーゴ・チャベスが始めた「ボリーバル革命」(無償医療制度・農地改革の実施、国営石油会社〔PDVSA〕への統制強化と富の公平な分配を柱とするベネズエラ式社会主義の実践)によってその容貌は一変した。
以来20年間、この地での米国による政権転覆の試みは、繰り返し行われてきた。2013年にチャベスが道半ばで倒れ、後継者であるニコラス・マドゥーロが大統領に就任してからは、さらに激しいものとなっている。
2014年末に国際石油価格が急落し、改革の礎である石油輸出に打撃を与えた。さらに当時のオバマ政権は、ベネズエラを米国の安全保障上の脅威とする大統領令を発令、「人権弾圧」を理由に政府要人の米国内資産を凍結し金融取引を禁止する制裁を発動した(2015年3月)。これ以降、今日に至るまで大統領令は更新され、経済制裁は段階的に強化されている。
米当局は一連の制裁を政府による「人権弾圧」を止めるための措置と強弁するが、一連の制裁による金融封鎖はベネズエラ政府が財・サービスの輸入のために通常行っている国際決済に直接的に影響しており、具体的には食糧や生活必需品の購入のために政府が国際金融システムで行うオペレーションを阻害し、ベネズエラ人民の生活に深刻な影響を及ぼしている。