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早春に咲き誇った「花」

2024年04月02日 10:00 コラム 取材ノート

暖冬とは思えない寒さが続いた。その最中である3月10日に朝鮮大学校第66回卒業式が行われた。

新型コロナウイルス感染症が流行り始めた頃に入学した卒業生たちの初登校は20年9月だった。「家に帰る度、朝から晩まで働きにでていた母を見て『もし朝大に行かなければ…』という考えが何度もよぎった」。金華瑛さん(文学歴史学部卒)が両親へ宛てた手紙の一節だ。金さんは経済的に苦しい中でも大学生活を支えてくれた両親への感謝を涙ながらに述べながら「私を立派な朝鮮人として育ててくれた両親のように生徒たちを育てたい」と教壇に立つ決意を語った。

この手紙が読まれた祝賀宴の場で保護者よりも涙していたのは司会を務めた姜理香さんだった。姜さん号泣の訳は、金さんと同じ文学歴史学部で寝食と苦楽を共にしたからであろう。涙をとめどなく流しながらも進行を続ける姜さんの姿に、会場はどっと沸いた。

笑いあり涙ありの祝宴が終わり参加者たちは外に向かった。

清々しく晴れ渡った空の下では、保護者と在学生たちが卒業生との写真撮影に忙しなく歩きまわっていた。その群衆の奥には寒さによって咲けなかった白木蓮の木が佇んでいた。例年、早春に咲く白木蓮の枝先には小さな白い蕾があるのみ。それは卒業生たちとの別れを惜しむ涙のようにも思えた。

一方で、春を知らせる「花々」を目にした。コロナ禍という冬を越し、同胞社会に春風を起こす決意に溢れる卒業生たちの笑顔が白木蓮より先に咲き誇っていた。

(晟)

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