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“どうせ”を乗り越えて/金潤実

2023年12月11日 09:00 それぞれの四季

この社会の制度も構造も「どうせ変わらない」と思っている自分がどこかにいる。

昨年、あるアート関係の国の助成金の応募条件の中に「国内アーティスト」の定義が「日本在住で日本国籍保持者」と指定があることを知った。これは後から知ったのだが、よく知られた別の国の助成金でも、応募アーティストを「日本国籍又は日本の永住資格を有すること」と定義するものがある。

アーティストである友人が問題だと思いシェアしてくれたのだが、国籍やルーツで排除されることなんか「よくあることだ」と正直思ってしまった。一方でそれくらい「慣らされている」自分がやばいと思った。

そしてすぐ思い浮かんだのは自分が当事者という事よりも、美術の道を選んだウリハッキョの教え子たち。そして今の在日以上に困難な状況が予想できる様々な外国籍のマイノリティ、その中にも美術を志す子どもがいる。

志した先に「あなたは日本の一員じゃない」と言われるような排除があれば、どうしてそこに進みたいと思えるだろう?そもそも、排除や無理解のチクチクが積もり重なって、その道に進もうとすら思えなかった人がどれだけいるだろう?アートに限らずそれは社会にとって大きな損失では?

この件をどうにかできないかと事が動いた過程で、他人事な人も少なくなかったが、問題にきちんと目を向けるアート関係者が何人もいることを知れた。

友人はじめ、出会えたその人たちから学びをもらった。どうせ変わらないというこびりついたモノと共に、自分に手の届く範囲から、切り開いていかなければいけない。誰しもが他人事ではないのだから。

(大阪市在住、朝鮮学校美術講師)

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