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非同盟運動の組織化へ/HOWSで朝大教員が対談

2023年09月05日 10:50 時事

社会主義の役割を再考

826日、本郷文化フォーラムワーカーズスクール(HOWS)が主催する講座シリーズ「第三世界(非同盟運動)の過去、現在、そして未来へ」の第3回講座が本郷文化フォーラムホール(東京・文京区)で行われた。本シリーズは、非同盟という形で結集した第三世界の諸国・諸人民の帝国主義に抗する闘いの過去、現在、未来に目を向けることで、第三世界が紆余曲折を経ながら歩んできた道のり、非同盟運動の意義を再考しようとするもの。第3回は非同盟運動の「未来」に焦点を当て、朝大外国語学部の林裕哲准教授とHOWS事務局の大村歳一さんが対談した。

反帝国主義の視座

林准教授はまず、冷戦時代を考えるうえで重要なことは、共産主義・社会主義陣営と資本主義陣営による「東西対立」に加え、南半球に位置する旧植民地諸国などの発展途上国と、北半球に位置する西欧列強を中心とした資本主義先進国の間に横たわる「南北問題」の観点を持つことだと指摘。そのうえで、現在も続く帝国主義的な世界構造、新植民地主義を克服するためには、「東」と「南」が重なる部分を拡大していかなければならない、すなわち、非同盟運動の中でも民族解放闘争や新植民地主義との闘いにおいて原則を堅持してきた社会主義諸国の経験や教訓を踏まえ、社会主義的な変革方法を模索していかなければならないと語った。

林准教授は、昨今世界の多極化に関心が集まっているが、世界の秩序や構造を変革するには「第三世界の組織化」が求められると述べ、それこそが非同盟運動が担わなければならない役割だと強調。非同盟運動の課題は、①第三世界が主導する公正な経済秩序の構築、②米国と追従勢力による干渉主義的な軍事介入を頓挫させる真の平和の構築(国際法や国連憲章の擁護など)、③帝国主義秩序を克服するうえで前提となる植民地過去清算に取り組んでいくことだと語った。また、第三世界を組織化する過程で非同盟運動の牽引役、前衛となりうるのは、現在も社会主義を堅持している国々であると付け加えた。

対談ではほかにも、「新植民地主義からの脱却」を目指す旧フランス植民地国のブルキナファソ、マリ、ニジェールにおける反仏感情の高まり、国連憲章で絶対不可侵とされている国家主権を侵害する西欧介入主義の狡猾さ、それを背後で支える国際人権NGOの正体、西側諸国による偏った情報が氾濫する中で非同盟運動主導の新世界情報秩序を構築していく必要性、非同盟運動の会合で度々中心議題として挙げられてきたパレスチナ問題、ウクライナ事態に対する朝鮮とキューバの立場など、さまざまなトピックが議論された。

林准教授は結びの言葉で、1970年代に見られた、「大西洋同盟」とも言える大西洋支配体制の危機が今日も起きているとし、大西洋支配体制の揺らぎが米欧とロシア、中国、朝鮮の対立構図を鮮明にし、ウクライナ・台湾海峡・朝鮮半島問題を激化させていると指摘した。一方、第18回非同盟諸国首脳会議(201910月、バクー)を開催したアゼルバイジャンの主導のもと、今年7月にフランスの植民地主義に反対する「バクー・イニシアティブ・グループ」が非同盟運動の枠組みの中で設立されたことについて触れながら、反帝国主義の視点から国際情勢を捉える必要性について改めて強調。西側先進国における左派運動、進歩運動が正しい視点を持ち、反帝国主義の動きに連帯していくことが求められると語った。

今回の講座では対談に先立ち、第1回で講演したフランス文学者の高演義さん(元・朝大外国語学部長)による問題提起が共有された。問題提起では、非同盟運動を再考するにあたり、非同盟同運動は長いスパンで世界の物事に変化をもたらしてきたということ、大きな受け皿を持つ「ゆるやかな国際連帯運動」としての非同盟運動が今日まで続いていることをどのように評価するか、日本において非同盟運動の評価がなぜ低いのか、という点を検討すること重要だとされた。

(李永徳)

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