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〈ものがたりの中の女性たち69〉「姉君六人はなぜ行かないのですか」―パリ公主

2023年07月13日 13:25 寄稿

あらすじ

王は7人目も姫だと知ると海に捨てろと命じ、「パリテギ」(바리데기)と名付ける。捨てられた姫は天の助けにより成長する。しかし、天啓に背き女だという理由で娘を捨てた王と王妃は、天罰で病に倒れ国も傾く。占いによると、王の病にはあの世の果てにある命の水が効くという。文武百官も、6人の姉姫も行くことを拒む。パリだけが、両親と国のために死地に赴く。彼女は道中火の翼を持つ麒麟に助けられ、妖怪や白虎、青龍に苦しめられながら、黒い砂漠や氷の山脈を越え、深海から続くあの世に行き着く。さらに弥勒と菩薩の助けにより、地獄を通り、命の水がある仙境に至る。男装の彼女は命の水を守る巨人の武将神に会う。9年間無償で水汲みや柴刈りをし懸命に働くが、女であることがばれ、そのまま婚姻、7人の息子をもうける。ある日見た不吉な夢に、彼女は国に帰ると言う。毎日汲んでいた水が命の水であることを知った彼女は、夫と息子たちを伴い帰郷の途につく。途中、権力を失うことを恐れた姉たちの兵の攻撃を受けるが、あの世で得た霊薬と、巫女の神剣、神鈴により危機を脱する。すでにこと切れた王と王妃に生命の水と不思議な植物を与えて蘇らせると、感激した王に国の半分を与えると言われるが断り、さ迷う霊魂を救済する道に進むことを決心。この時以来、パリは巫俗神の始祖女神となり、あの世で剣と鈴、三又の槍を持って霊魂を導くという。巨人の武将神は山神になり、あの世とこの世を繋ぐ役割を担い、七人の息子は地獄の審判になったという。

第六十九話 捨てられた姫君

パリ公主(바리공주)のものがたりは有名な巫俗神話であり、すべての巫俗人が始祖と仰ぐ「巫祖神」の来歴が描かれている説話である。その伝承は、人の死に際して行われる一種の鎮魂儀礼の「굿(クッ)」のときに歌われる叙事巫歌として今も受け継がれている。地方ごとに多くの異本が採録されている。「바(パ)리(リ)공(公)주(主)」とは「버려진 공주―捨てられた公主」という意味で、地方により「바(パ)리(リ)데(テ)기(ギ), 버(ポ)리(リ)데(テ)기(ギ), 베(ペ)리(リ)데(テ)기(ギ)」などと呼び方は多様。漢字で鉢(パル)里(リ)公主、捨(サ)姬(フィ)公主と呼ばれることもある。

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