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〈トンポの暮らしを支える/こちら同胞法律・生活センターです! 36〉住民税、払わなかったら?

2023年07月12日 12:00 寄稿

今年もあっという間に半年が過ぎました。3月の確定申告が終わり所得税を払い終えたと思ったら、固定資産税、自動車税、住民税と納付書類が次から次へと送られてきて、事業主であれば労働保険料や源泉所得税の特例納付と、納税ラッシュの時期でもありました。特に今年は社会保険料率や雇用保険料率が上がっているので、その負担感はいっそう増しており、中にはどうしても払えない状況に陥っている方もいるかと思います。支払いが困難な時はどうすればよいのでしょうか。今回はほとんどの方に関連がある住民税を例にして解説します。

Q「税金は後回しにして銀行への返済を優先」。これは正しい?

A 税金を徴収する公的機関より銀行の取り立ての方が厳しいような印象がありますが、実は税金を後回しにするのはあまり良い方法とは言えません。

なぜなら、税金を確保するための差し押さえ処分(滞納処分)は他の借金などに比べて容易に手続きが行えるからです。金融機関などの一般的な借金にかかる差し押さえは訴訟手続きが必要で、差し押さえまでに長い時間を要するのですが、税金は訴訟手続を行なわなくとも差し押さえが可能なのです。

なお、借金などの債務は自己破産をすることで支払い義務が消滅することもありますが、住民税をはじめとする公租公課は自己破産しても支払いが免除されません。

また住民税の納税義務の時効は5年となっていますが、住所を把握されている役所から督促が来るたびに時効のカウントはゼロから再スタートとなるため、時効により納税義務が消滅することはほぼありえません。

このように、差し押さえまでの時間的猶予が無く、時間が経過しても支払い義務は消滅せず、逆に時間が経過すればするほど延滞金が増え続けてしまうため、どんなに大変であっても税金の支払いを後回しにすることは避ける方がよいと考えられます。

Q 住民税の滞納から差し押さえまで「最短1カ月」って本当なの?

A 滞納から差し押さえまでの流れは以下の通りです。

①住民税を納期限までに払わない(滞納)

②役所から「督促状」が届く

通常滞納した日から20日以内で役所から督促状が届きます。法律では督促状を発した日から起算して10日を経過した日までに完納しない場合、「滞納者の財産を差し押さえなければならない」と定められています(地方税法第331条など)。

③督促によっても納付がない場合「催告書」が届く

催告書は地方税法の規定にはありませんが、自主納付を促すために送られてきます。

これは実質的な「差し押さえ予告書」と考えていいでしょう。

④財産が差し押さえられる

このように法律上は「滞納から20日以内に督促状、督促状を発して10日経過したら差し押さえ」となっているので、最短1カ月で財産の差し押さえは可能と言えます。

しかし実際のところ1カ月後にすぐ差し押さえられることは滅多に無く、数回にわたり督促状が届いたり、役所から電話により納付を促されたりするので、差し押さえまでには一定の期間があるようです。

ただし支払いが1カ月以上遅れた場合には行政はいつでも差し押さえができるということは頭に入れておきましょう。

Q どうしても税金を払えないときはどうしたらいいの?

A 税金を支払うのがどうしても難しいと判断した時は、まずは役所へ相談に行くことです。納税が困難な事情を説明して分割納付ができないかなどを相談し、納税することにつき誠実な意思があるということを表明しましょう。

具体的な制度としては「徴収猶予」と「申請による換価の猶予」があります。猶予が認められると、原則として最長1年間、猶予期間中の延滞金が減額または免除され、滞納処分による財産の差押えや換価(売却)が猶予されます。

1. 徴収猶予(地方税法第15条第1項)

対象者:以下の条件のいずれかに該当し税金を一時に支払うのが困難な方

①財産について災害を受け、又は盗難にあったこと

②納税者又はその生計を一にする親族などが病気にかかり又は負傷したこと

③事業を廃止し又は休止したこと

④事業について著しい損失を受けたこと

2. 申請による換価の猶予(地方税法第15条の6

対象者:税金を一時に納税することによって事業の継続又は生活の維持を困難にする恐れがある方

いずれも猶予を受けようとする金額が100万円を超える場合には担保の提供が必要になります。

上記猶予制度のほか、住民税の一部または全額が免除になる減免の制度があります。

減免の条件は市町村ごとに異なりますが、一般的には次のような条件に当てはまる場合にはその対象になります。

①生活保護、公私の扶助を利用している方

②失業、疾病等により収入が減少した方

③震災、風水害、火災その他これらに類する災害を受けた方、など

住民税の減免を受けることを検討する場合には、まずお住まいの市町村のホームページをご確認ください。税金の滞納は放っておくことが一番のリスクです。まずは役所に相談することから始めましょう。

(梁仙麗、税理士、同胞法律・生活センター相談員)

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