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〈トンポの暮らしを支える/こちら同胞法律・生活センターです! 29〉育児休業について、改正育児介護休業法の主要部分が施行

2022年11月16日 12:00 寄稿

2022年10月1日から改正育児介護休業法の主要部分が施行されました。今回の改正は、育児休業を柔軟で取りやすい制度とすることにより、主に男性労働者の育児休業取得を促進し、女性の雇用継続や夫婦が希望する数の子を持つことに資することなどを目的としています。

Q.小さな販売店を経営しています。従業員は1人だけ女性の正社員がいます。その従業員が妊娠したので子が1歳になるまで育児休業を取りたいと言ってきました。うちは個人商店なので、育児休業なんてありません。働けないのなら次の人を雇わないと回らないので、その従業員には辞めてもらうしかないのですが、解雇して大丈夫ですか?

A.解雇はできません。男女雇用機会均等法では原則「妊娠中の女性労働者及び出産後1年を経過しない女性労働者に対してなされた解雇は、無効」と定められており、育児介護休業法では、育児休業の申し出等をした労働者に対して解雇その他不利益な取り扱いが禁止されています。

女性の場合はまず労働基準法により、原則産前6週間・産後8週間の産前産後休業(産休)があります。最近ではその後、引き続き育児休業を取得するのが一般的で、令和3年度の調査では女性の育児休業取得者の割合は85.1%となっています。育児休業(育休)とは、育児介護休業法により、1歳に満たない子を養育する労働者が事業主に申し出ることにより取得できるお休みで、事業規模にかかわらず、契約満了予定の有期雇用労働者など法律で決まっている一部例外を除きほとんどの労働者が利用できる制度です。

なお、1歳になっても保育園に入れないなどの事情があれば1歳6ヶ月まで引き続き取得が可能で、1歳6ヶ月でも同様の事情があったときは最長2歳まで引き続き育休できることになっています。1歳時点と1歳6ヶ月時点では配偶者と交替しても引き続きの育休を取得できるほか、1歳6ヶ月まで・2歳までの途中でも1回配偶者と交替しての取得も可能です。

申し出ができる回数は、1歳までの育休は子1人につき2回まで、1歳6ヶ月まで・2歳までの育休はそれぞれ1回限りです。なお双子以上も子1人とみなされます。

産休中と育休中、事業主は給与を支払う必要はありません。本人には、ざっくりの金額ですが、産休中は健康保険から給与の2/3、育休中は雇用保険から最初の180日は約67%、それ以降は50%が支給されることになっています。また、産休中と育休中は、社会保険料が本人負担分だけでなく事業主負担分も免除されます。

産休・育休中の労働者に対する事業主の経済的な負担は基本的にありません。せっかく育てた社員を辞めさせてしまうのはもったいないです。派遣労働者など代替要員を確保して、社員の育休と復帰に備えてください。育休から復帰した社員は長く勤めて、ますます事業の発展に貢献してくれる筈です。

Q.入社7年のサラリーマンです。このたび共働きの妻が2人目の子を授かりました。上の子もいるので私も育休取得を考えています。このたびの法改正で男性も「産休」を取れるようになったと聞きました。その他、育休取得の注意点などもあれば教えて下さい。

A.“男性も産休というような報道がされましたが、これはママが産休を取る産後8週間の期間内に取れる特別な育休のことで、通称「産後パパ育休」正確には「出生時育児休業」といいます。お休みできる期間は4週間(28日)までで、ひとまとめに取っても、2回に分けて取ってもかまいません。

ただし、2回に分けるときは最初の申し出の際に2回分をまとめて申し出なければなりません。忙しいパパさんでも取得を検討しやすいように、会社との労使協定があれば産後パパ育休中は一部就労することも可能です。申し出の時期や就労可否など、会社によってルールが異なりますので、くわしくは会社の人事総務担当者にご確認ください。

お休み期間が4週間では足りない人は、産後8週間の期間であっても、産後パパ育休ではなく、普通の(1歳までの)育休の取得も可能です。また、産後パパ育休は、1歳までの育休とは別枠ですので、産後パパ育休を取得して復帰した後に1歳になるまで、普通の育休を2回まで取得可能です。

今回の法改正で育休をこま切れに取得できるようになったことに合わせて社会保険料免除のルールが見直されました。月末が育休中か、その月の育休日数が14日以上でなければ免除されません。社会保険料の額は大きいので、育休取得の計画を立てる際には気を付けてみてください。

ここまで育児介護休業法の育休制度の解説をしましたが、法を上回る制度を設けている会社もたくさんありますので、自社のルールを確認してください。また、様々柔軟に対応してもらえる可能性もあると思いますので、まずは会社に相談です。赤ちゃんと過ごせる時間は楽しく大切で貴重なものですが、あっという間の短い期間です。色々な制度を最大限に活用して仕事と両立しながら乗り切ってください。

(金仙喜、NPO法人同胞法律・生活センター副所長、社会保険労務士)

育休取得の例(「出」は出生時育児休業)

 

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