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〈トンポの暮らしを支える/こちら同胞法律・生活センターです!23 〉成年年齢が18歳に引き下げ

2022年06月13日 09:29 寄稿

民法の改正により今年の4月から成人年齢が18歳に引き下げられました。成人年齢の変更は1896年の日本民法制定以来初めてとのことだそうです。成人年齢が18歳になったとは言え、飲酒・喫煙や競馬などの公営ギャンブルは20歳にならないとできません。また国民年金に加入する義務も20歳からです。では、何がどのようにかわるのでしょうか? 今回は成人年齢の引き下げについて取り上げます。

Q 民法の一部改正により、成年年齢が18歳に引き下げられたことによって、何ができるようになったのでしょうか。今後の生活で変わること、変わらないことを教えてください。

1 民法改正の内容

2018年6月13日、民法の成年年齢を20歳から18歳に引き下げること等を内容とする民法の一部を改正する法律が成立し、2022年4月1日から施行されました。今回の民法一部改正により、「成年」の定義は約140年ぶりに変更されたことになります。

今回の改正内容は、

  •  成年年齢を20歳から18歳に引き下げる(民法4条)
  •  これまで男18歳・女16歳だった婚姻適齢を、男女ともに18歳とする(民法731条)
  •  婚姻による成年擬制(民法753条。20歳未満で婚姻した場合は、婚姻後成年とみなされていた制度)を削除
  •  これまで養親となる者の要件を「成年に達した者」としていたものを「20歳に達した者」としたこと(民法792条)

です。

2 今回の改正で変わること

民法の成年年齢には、①1人で有効な契約をすることができる年齢という意味と、②父母の親権に服さなくなる年齢という意味の2つがあります。

まず、①の側面からは、成年年齢が18歳に引き下げられたことによって、18歳になると、父母の同意なしに、様々な契約(たとえば、携帯電話の購入、1人暮らしのためのアパートを借りる、車購入のためのローンを組む、クレジットカードの作成等)をすることができるようになります。

民法では、未成年者を保護するために、原則として、未成年者が父母の同意を得ずに契約した場合には、当該契約を取り消すことができるとされていますが(民法5条2項。未成年者取消権)、成年年齢引き下げにより、18歳になって行った契約を取り消すことができなくなります。なお、2022年4月1日以前に18、19歳の方が父母の同意を得ずに契約をした場合は、取り消すことができます。

次に、②の側面からは、18歳になると、父母の親権に服すことがなくなるため、進学や就職、自身の居所(住むところ)を自分の意思で決めることができるようになります。もっとも、自分の意思で決定できるとしても、進路等について、父母や先生等に相談することが大切であることには変わりはありません。

その他、性別の取扱いの変更審判を受けることなどについても、18歳でできるようになります。

3 変わらないこと

民法以外にも、成年年齢に関する法律がいくつかありますが、今回の民法の一部改正に伴い、多くの法律では、「未成年」としていた要件を「20歳未満」と改める改正がありました。そのため、成年年齢が引き下げされましたが、民法の規定以外で、変わったものはほとんどありません。

たとえば、喫煙に関する「未成年者喫煙禁止法」は「20歳未満ノ者ノ喫煙ノ禁止に関スル法律」に題名改正され、20歳未満の喫煙を禁止し、飲酒に関する「未成年者飲酒禁止法」は「 20歳未満ノ者ノ飲酒ノ禁止ニ関スル法律」に題名改正され、20歳未満の飲酒を禁止しています。また、競馬、競輪、競艇等の公営ギャンブルについても、競馬法等により、禁止する対象を「未成年者」から「20歳未満の者」に改正し、20歳未満の公営ギャンブルを禁止しております。

したがって、成年年齢は18歳に引き下げられましたが、飲酒、喫煙、公営ギャンブルはこれまでと同様に20歳にならないとできません。

なお、パチンコに関しましては、これまでとおり18歳からです(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の改正はなし)。

Q 成年年齢引き下げによって、これまでに合意した養育費の支払いは影響を受けますか。また、今後、養育費を決めるにあたり注意すべきことはありますか。

養育費支払いの合意書等にどのような文言が記されているかにもよりますが、仮に、「成年に達するまで養育費を支払う」との合意であった場合でも、合意した時点では成年年齢が20歳であったことから、これまでとおり、20歳まで養育費支払義務があると考えられます。

なお、養育費とは、子どもの監護や教育のために必要な費用のことをいい、一般的には、子どもが経済的・社会的に自立するまでに要する費用(衣食住に必要な経費、教育費、医療費等)を指します。つまり、子どもが成年になったとしても、経済的・社会的に自立していない場合、父母は養育費を支払う義務を負うことになります。

したがいまして、成年年齢が引き下げられたからといって、養育費の支払期間が当然に18歳までということにはなりません。ちなみに、大学への進学率が高い現代においては、調停等裁判所を利用する場合は、ほとんど、「満22歳に達した後最初に到来する3月まで」や「大学を卒業する●年●月まで」養育費を支払うといった取り決めを行っております。

このように、現在は、大学を卒業するまで養育費の支払義務を負うことが一般的と考えられているため、大学進学を見越し、いつまで養育費を支払ってもらうか、具体的に合意すべきです。

(NPO法人同胞法律・生活センター副所長 金秀香 弁護士)

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