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大阪「無償化」裁判・弁護団、金英哲弁護士に聞く

2013年02月06日 10:48 主要ニュース

大阪朝鮮学園と愛知朝鮮中高級学校の生徒、卒業生ら5人が原告となり1月24日、国を相手どり「無償化」制度への適用を求める訴訟と、適用除外による損害賠償を求めた訴訟を大阪地裁と名古屋地裁にそれぞれ起こした。大阪「無償化」裁判弁護団の金英哲弁護士に裁判の争点や展望などについて聞いた。

金英哲弁護士

「無償化」除外は違法

Q. 「高校無償化」制度から朝鮮学校のみを外して考えるということは違法ではないのか?

A. 「除外」はされておらず正確には「審査中」ということだ。しかし審査開始から1年以上という相当な時間が経っているのは事実であり、それに対して不作為の状態が続いているのは違法だといえる。

また、国際人権法における民族的マイノリティの教育への権利の内容とその保障、そして、「教育への権利の無差別・平等保障」に向けた国の義務内容からみれば、国による朝鮮高級学校に対する「無償化」法の「指定」停止状態は、国際人権条約に違反するばかりか、人種差別撤廃条約第4条(c)の「国又は地方の公の当局又は機関による人種差別の助長又は扇動」に該当するものであり、同第4条(c)違反と評価しうるものである。

Q. 「審査中」であるのに改正案を出し、省令を変えてしまうことについてどう考えるか?

A. 「無償化」法の施行規則では支援金の支給対象となる外国人学校の類型をイロハの3つの条項で定めている。イが外交関係のある国の外国人学校、ロがイの他に国際的な学校評価機関などから認定を受けている外国人学校、ハが外交がなくても文部科学大臣が認定する外国人学校、である。原告である朝鮮学園は2010年11月27日に施行規則のハの条項に基づく申請を完了したが、未だ結果が出ていない。

行政手続法では、申請者に対し、申請した内容に対してどのような結果(処分)が出るのか、予測可能性を与えるために、申請に対する処分の規定を定めている。これは審査基準をちゃんと定めなければいけないというものだ。

仮に、審査基準を国が作って、その基準に基づいて(朝鮮学校も)申請しているのに、途中で規定自体を変えられるということになると、その予測可能性が全くなくなってしまうということになる。これは行政手続法の趣旨にも反し、違法だと考える。

また、朝鮮学園が申請を完了した年の8月に、同じ規則に基づいて申請を行っていた開校直前のホライゾンジャパンインターナショナルスクールに対して指定を行い、また各種学校として認定された直後の同年5月31日付けで申請を行ったコリア国際学園に対しても同年度内12月に指定を行った。

文部科学大臣は他の外国人学校に対しては、開校に間に合うように、または申請年度内に指定が行なわれるよう配慮し、実績のない学校にも指定を行っている。そのような中、朝鮮学校のみがこのような処遇を受けるのはおかしい。そして、いまになってハの条項のみをなくそうということが朝鮮学校を狙い撃ちにしているとしか考えられない。

Q. 先月24日に大阪と愛知で「無償化」裁判がはじまったが、2つの裁判の争点、展望は?

A. 大阪の裁判は、朝鮮学園が原告となり、国を相手として2年以上も就学支援金支給対象校としての指定をしないことの違法を確認する訴訟と、「無償化」法に則った指定を義務付ける訴訟を併合したものだ。争点は、指定するかどうか審査するための相当な期間が経過しているのかどうかと、指定されるべき基準を学校が満たしているのかどうか。基準は授業時間や1クラスの人数など客観的に決められていて、朝鮮学園が提出した資料からは、基準が満たされていることが明らかだ。したがって、普通に考えれば有利な裁判だと考えるが、相手は国なので油断はできない。

名古屋の裁判は、卒業生など数人が原告となり、国に対して就学支援金の支給を受けられなかった精神的な損害について賠償を求めるものと聞いている。争点は、国が朝鮮学校の生徒に就学支援金を支給しなかったことが違法か、憲法14条が禁止する差別にあたるかにある。その場合、原告らの精神的苦痛がどの程度あったかなどだ。裁判官が卒業生達の心情をどれほど理解してくれるかがポイントになるのではないだろうか。

Q. 大阪での補助金問題に対する影響について

A. 補助金というのは自治体の長の裁量による問題だ。「無償化」の問題のために補助金への影響が直接的に関連するということはないと思う。しかし朝鮮学校のみが制度に適用されず審査が遅れているということが、事実上朝鮮学校を敵視する人間が集まった「勢力」を勢いづかせているようにも感じる。それによって社会的に朝鮮学校を除外するイメージが作られてしまう恐れもあると思う。

Q. ラグビーやボクシングなど、朝高生たちの活躍を知ってどう感じたか?

A. 本当にすごいことだと思う。近年、ラグビーでは毎年のように全国大会に出場しているし、卒業生として嬉しいし、喜びとなっている。

かつて認められていなかった権利が認められ、いまでは全国大会に出場するまでに至った。彼らの権利が奪われることがないように、守らなければと感じる。

Q. 今後在日同胞たちはどのように運動を展開していくべきか?

A. 政権が変わって現在我々にとってかなり厳しい環境になっていると思う。何をするにしてもすぐに「揚げ足」を取られる可能性も考えられ、政治でたたかうのはいっそうむずかしい。

これからは自分たちの主張を単に主張するのではなく、法的に正しいことを正しく主張していくことが大事だ。

我々弁護士をはじめ有資格者たちが同胞たちに対し、そのための理論づけをしっかりしていきたい。

また現在、大阪の教育補助金裁判もおこなわれているが、裁判の過程で朝鮮学校の現状が明るみになれば理解者も増えるだろう。

(聞き手=李炯辰)

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