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〈それぞれの四季〉加害の国で被害訴えた宋神道ハルモニ/ぱんちょんじゃ

2019年10月30日 11:59 コラム

2007年夏、映画「オレの心は負けてない」の試写会で宋神道ハルモニの圧倒的な存在感と迫力に心を奪われた。2011年、震災で被災、女川から東京に居を移してからは関西にも何度か足を運んでもらった。不機嫌に黙り込んだかと思うと、急に饒舌になったり、憎らしかったり、愛しかったり、その都度見せる素顔に私たちは一喜一憂した。

16歳から7年間に及ぶ性奴隷生活のすさまじさを物語る身体中の傷跡、繰り返された妊娠と出産。死産した子どもを、鏡を見ながら手で掻き出した話、生まれた子どもに浴衣でおむつを縫うも、手放さざるを得なかった。解放後、日本兵に騙されて日本に渡るも捨てられ、自殺を図り、救ってくれた河在銀さんとともに生きた。汚れた女というだけでなく、在日朝鮮人であることで差別と偏見に苦しめられた。そんなハルモニの人間に対する不信感を拭ったのは、ともに裁判を闘った「支える会」の存在だった。人間の尊厳を問う裁判は敗訴に終わったが、国の責任は認められた。

請われればどこにでも駆けつけてマイクを握ったハルモニは、当時を懐かしむかのように軍歌を歌うが、最後の言葉はいつも「戦争は絶対ダメ!」。何重にも踏みにじられたが、とうとう謝罪の言葉ひとつ受けることなく旅立って、まもなく3回忌。今は河在銀さんと並んで故郷の丘に眠る。

(大阪市在住、日本軍「慰安婦」問題・関西ネット共同代表)

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