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蔓延するヘイト、包括的な人種差別の撤廃を/ヘイトスピーチ解消法から2年

2018年06月04日 13:06 主要ニュース

公権力が差別を扇動

特定の人種や民族への差別を扇動するヘイトスピーチ。16年6月3日に施行されたヘイトスピーチ解消法では、差別的言動が被害者に多大な苦痛を与え、地域社会に深刻な亀裂を生じさせているという害悪が認められるとともに、差別的言動は許されないことが宣言された。しかし、禁止規定、罰則のない理念法の限界を指摘する声も。公権力が差別を容認、扇動する状況下で、事態は深刻さを増している。

継続するヘイトデモ

5月27日、東京・銀座――。

「日韓断交、朝鮮爆砕」「圧力で北朝鮮にとどめを」

旭日旗、日章旗を翻す100人を超す人々が、隣国への憎悪を叫び、街を闊歩する。

5月27日、東京・銀座で行われたヘイトデモに反対するカウンター

ヘイトスピーチデモの主催者は、現・極右政治団体「日本第一党」党首をつとめる桜井誠。ヘイトスピーチ被害を受けた在日コリアン女性が「在特会」前会長である同氏と「在特会」を訴えた裁判では、人種差別行為が認められ有罪判決が下された。日本の代表的なレイシストによるヘイトデモを野放しにしているのが、日本の現状だ。

14年のピーク時には年間378件に上ったヘイトデモ・街宣。その回数と規模は縮小しつつあるが、新宿、池袋、銀座など都心の繁華街を中心に、週に1回の頻度でヘイトデモが継続されるなど、根絶には程遠い状況がある。

また、解消法施行以後、在日コリアンをはじめとするマイノリティに対する「死ね」「殺せ」などの直接的な表現の割合は減少したが、政治的意見のように見せかけた差別的言動は引き続き路上に溢れ、選挙運動に名を借りた形でのヘイト街宣など、その手口は巧妙化している。

警察はカウンターの前に立ちふさがり、守るようにヘイトデモ参加者を囲む(5月27日銀座)

この日、30人ほどの差別に反対するカウンターの市民らが「差別主義者は帰れ!」「ヘイトスピーチは違法」とプラカードを掲げる中、警察はカウンターの前に立ちふさがり、守るようにデモ隊を囲んだ。一般の通行人も足を止め、固い表情でその光景を見つめる。

「人種を理由にしたこのようなヘイトデモは、日本に来てから初めて目にした」。当惑の面持ちでそう話すのは、ポーランド出身の企業研修生の男性。「このような行動にどんな意味があるのか理解ができない」。

毎週末、ヘイトデモのカウンター活動に参加する20代の会社員男性は「差別状況に改善は見られず、むしろ悪化している」と話す。「デモ隊の発言に論理はなく、差別を娯楽として楽しむ彼らを野放しにしている状況だ」とやるせなさを滲ませた。

地方自治体の動き

95年に人種差別撤廃条約を批准した日本政府は、包括的な人種差別撤廃に取り組む国際人権法上の義務を担う。しかし、批准から20年以上が経つ中で、日本において反人種差別法は制定されず、マイノリティに対する人種差別は野放しにされてきた。

差別に反対し、友好を訴える(5月27日銀座)

16年に施行された解消法は、これまで差別の存在を認めず、法整備の必要性を否定してきた日本政府が初めて差別的言動の害悪を認め、反差別の立場を示したという点で少なくない意義があった。

しかし、解消法は、憲法が保障する「表現の自由」を侵害する恐れがあるとして、罰則や禁止規定のない理念法にとどまり、また、具体的施策が盛り込まれなかったことから実効性が弱く、地方自治体の施策・条例作りに頼らざるをえない側面がある。

法務省は、解消法施行に伴い啓発活動を行う他、施行1年目にはヘイトデモの多い13の地方公共団体と情報交換会を行い、外国人住民に対するアンケート調査を実施。しかし、2年目に入っても、解消に向けた施策や計画を明らかにしていない。

地方自治体では、大阪市が16年に全国初のヘイトスピーチ抑止条例を制定。翌年には、市がヘイトスピーチと認定した3件の動画の削除をプロバイダーに要請、投稿者のアカウント名を公表したが、条例に掲げた発信者の氏名公表までには至っていない限界がある。

また、解消法成立を受け、全国で初めてヘイトデモの公園使用の不許可(16年6月ヘイトデモ禁止仮処分命令申立事件判決)を下した川崎市では、公的施設でヘイトスピーチが行われる恐れがある場合、事前に利用を制限できるガイドラインを今年3月に施行。しかし、ヘイトデモ常習者による公的施設での集会(6月3日)を不許可要件にあたらないと判断し、使用を許可するなど、後退した姿勢を見せている。

勢いを増す差別扇動

解消法の限界が明らかになり、反差別の規範が社会に確立されない中で、差別扇動行為は勢いを増す。その背景には、差別を容認、助長させる公権力の存在がある。

差別反対を訴えるカウンター(5月27日銀座)

反レイシズム情報センター(ARIC)の政治家レイシズムデータベースによると

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