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人権侵害する制裁の廃止求め/人権協会が意見書発表

2017年11月17日 09:00 主要ニュース 権利

制裁論議に“一石を投じる”

在日本朝鮮人人権協会は10月30日、在日朝鮮人の人権を侵害する制裁措置の廃止を求める意見書(以下、意見書)をホームページで公開。今月16日付で制裁関連省庁の内閣府・法務省・財務省・経産省に送付した。意見書は、日本独自の対朝鮮経済制裁措置のもとで在日朝鮮人の人権が広範に侵害されている状況、国際法・人権法の観点からその問題点を明らかにした。

理論的研究の必要性

2006年7月、日本政府が「我が国独自の対北朝鮮措置」と称して朝鮮民主主義人民共和国(以下、朝鮮)に対する経済制裁を発動してから約10年。この間、日本独自の制裁措置は、国会で全会一致または圧倒的多数の賛成により可決、何らの検証・統制もないまま拡大強化され続けてきた。その結果、現在、朝・日間はヒト・モノ・カネの流れが全面的に遮断されるに至った。そして制裁措置のもとで在日朝鮮人の人権は幾重にも剥奪され、蹂躙され続けている。しかしこの点については日本社会において一切顧みられることはない。

10年間、弁護士として総聯関連施設に対する強制捜査や同胞の渡航問題などの案件に関わり続けてきた李春熙弁護士は言う。

「強制捜査の問題に関わるなかで、現存する制裁法制を前提にして警察権力の行使は不当だといくら主張しても限界があると感じ始めた。制裁を可能にしている関連法制や背後にある制裁政治の問題点を突き詰めることなしに、現場で対応することは事実上不可能ではないかと。とくに、政界や言論において制裁について国家間の政治問題や政策的妥当性だけが論じられ、現実に起こっている在日同胞の被害が完全に無視されており、制裁に関する理論的研究の必要性を強く感じたのがきっかけだった」

15年夏、李弁護士はこのような問題意識から人権協会所属の弁護士、研究者らに呼びかけ、集った有志らで2年間にわたって研究を続けてきた。

研究会で度々話されたのは、「対抗理論の不在」だ。右に倣えの日本の言論状況で、制裁による在日朝鮮人への人権侵害状況が伝えられることはまずない。ワイドショーで「在日の声」として取り上げられるのは、もっぱら朝鮮の核・ミサイル発射によって「在日に危害が加えられる」という本国批判、歪んだ人道論。両論併記にすらなっていない。対朝鮮強硬意見の対になる両論の一方は、当然、日本政府の制裁自体が平和を害し、在日朝鮮人の人権を侵害しているということ、そして制裁によって当然の権利である祖国との交流に不当な制約が課されてはいけないという主張であるべきだ。

制裁をめぐる極めて偏った論議に、当事者の声をもって一石を投じる―。このような有志たちの思いから意見書は作成された。

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