〈取材ノート〉地方自治体の忖度
2017年05月01日 11:16 コラム先月27日、千葉初中に対する千葉市の補助金不交付が決定された。市は13年度から「地域交流を通じた外国人児童・生徒の健全な育成を支援する」目的に助成を始めてきた。不交付の大きな理由として挙げられたのは、昨年12月、同校や近隣学校の児童生徒の作品を展示した美術展で、南日合意を否定する内容の作品が展示されたことだった。
この事件を受け、思い出されたのは、先月、群馬県立美術館の企画展で、同館が朝鮮人強制連行犠牲者追悼碑を模した作品の展示を開催直前に取りやめた事件だ。作品のモチーフとなった県立公園群馬の森にある追悼碑をめぐっては、碑前で行われた市民団体の集会で、設置条件に反する「政治的」な発言があったとして、県側が設置の更新を不許可。市民団体が県を相手取り、処分取り消しを求める裁判が行われている。同館は「県が係争中の事案で、展示作品はふさわしくないと判断した」と説明するが、同館の設置管理条例に撤去の根拠となる条文はなかった。
上記に共通するのは、千葉初中が積み重ねてきた近隣住民や学校との交流の歴史、群馬に至っては地域の市民団体が薄皮をはぐように明らかにしてきた朝鮮人強制連行に関する史実を、「政治的」というこじつけで否定し、進んで排除しようとする地方自治体の姿勢だ。政権に忖度した一連の行為は、少数者の思想、表現の自由を萎縮させ、歴史を語る試みをも閉ざそうとする暴挙にほかならず、横行する差別、排外主義を煽り、助長させることに繋がる。
(宥)