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〈米国の覇権戦略と東アジア〉(上)/“2015年版「桂-タフト密約」”

2015年06月15日 17:16 主要ニュース 朝鮮半島

日米ガイドライン再改定、第1目標は朝鮮半島

「2015年版『桂-タフト密約』だ」-ワシントンでオバマ大統領と安倍首相による首脳会談(4月28日)が行われた翌々日。ソウル光化門にある李舜臣将軍の銅像前に集まった南の市民団体メンバーは会見を開き、日米首脳会談で確認された新ガイドライン(日米防衛協力のための指針)の本質を一言で表した。

ソウル光化門で会見を開き、日米のガイドライン再改定を非難する南の市民団体メンバー

ソウル光化門で会見を開き、日米のガイドライン再改定を非難する南の市民団体メンバー

 合言葉は「北の脅威」

「桂-タフト密約」は、1905年に米陸軍長官ウィリアム・タフトと日本総理であった桂太郎が米国のフィリピン支配と日本の朝鮮支配を相互に認めた秘密の分割協定のことをいう。

2015年、朝鮮民族にとって容認できない日米の共犯関係が繰り返されようとしている。オバマ政権はアジア・リバランス戦略に基づく対中包囲網形成の一環として、解釈改憲による日本の集団的自衛権行使を支持した。一方、安倍政権は米国の覇権戦略に便乗し、日本を「戦争できる国」に仕立て上げようとしている。双方の思惑が一致し、日米ガイドラインが再改定され、自衛隊の行動範囲は朝鮮半島を含む全世界に広がった。

歴史的に見て、侵略と支配のための日米結託はアジアにとって不幸と災難の禍根であった。そして日本の軍事拡張は常に朝鮮半島と結びついてきた。

今も日本は隣国の「脅威」を口実に軍国化を進めている。米議会演説で集団的自衛権行使の法制化を「公約」した安倍首相は帰国後に関連法案を閣議決定。直後の会見では「北朝鮮の核・ミサイル」を法制化が必要な根拠として挙げた。

米側も口裏を合わせ、ガイドライン再改定の目的は「北朝鮮の挑発的行動を抑止するための米日共同対応」(カーター国防長官)だと公言している。あえて中国を名指しせず、もうひとつの敵国に矛先を向けることで中・米対立の先鋭化を避ける狡猾な手法だ。

 米軍との一体化

今後、日米は新ガイドラインに基づき自衛隊と米軍の共同作戦の策定に入ることになる。すでに防衛省の中央指揮所に米軍から、米軍横田基地に自衛隊から、それぞれ連絡員を派遣し「日米共同調整所」を設置する方針が示された。調整メカニズムの常設により平時から有事に至るまでの情報と情勢認識の共有が切れ目なく行われ、自衛隊と米軍の一体運用がさらに進むことになる。

自衛隊と米軍はこれまでも△合同軍事演習△合同偵察活動△基地の共同使用という3つの分野で緊密な協調体制を築いてきた。有事における作戦の研究も行った。旧ガイドライン(1997年改定)に基づき共同作戦計画「5055」が作成された。計画には朝鮮半島有事を想定した作戦内容と手段、攻撃方法などが明記されたという。

今回、ガイドラインが再改定され、自衛隊の軍事行動にあった制約が取り除かれたことで、日本が参加する「第2次朝鮮戦争」のシナリオ作成が本格化する可能性がある。数年前、日本の防衛省官僚が米大使館関係者に「北朝鮮の急変事態に備えた計画」を「米韓と共同で作成」することが「日本政府の長期目標」であると語ったとする秘密公文が流出したことが思い起こされる。

集団的自衛権の行使を前提とする新ガイドラインの制定は、朝鮮半島に対する日本の軍事介入に大きく道を開くことになる。自衛隊は日本が攻撃されなくても、ミサイル防衛(MD)や米艦船の防護など、米軍と一体化して軍事行動を行う。南では日本の介入に対する反対世論が高まっているが、当局にそれを阻止する権限はない。南の戦時作戦統制権(戦作権)を持つ米軍が要請すれば、自衛隊はガイドラインに従って動くことになるからだ。

米国は「韓国が望まない行動が行われることはない」(ケリー国防長官)と説明するが説得力はない。1950年代の朝鮮戦争において、日本は米軍の要請を受けて哨戒艇を派遣したが、当時、米軍は日本の「参戦」を南当局に知らせなかった。

3角同盟の形成

現在、南の朴槿惠政権は、日本の軍国化に反対するどころか、米・日・南の3角軍事同盟の強化に傾倒している。「北の脅威」を理由に戦作権の返還を事実上、無期延期することを米国側に申し出たのはこの政権である。

中国封じ込めを狙う米国の覇権戦略は米・日・南の3角軍事同盟をベースにしたアジア版NATO(北大西洋条約機構)の創設を掲げている。新たな軍事ブロックの形成は朝鮮半島の分断と北南対立の構図を固定化するものだ。

アジアの軍事的パワーバランスが変化し、国際秩序が再編されようとしている。朝鮮民族にとっては歴史的岐路といえる状況だ。米国が第2次大戦の戦犯国であった日本に免罪符を与え、その軍事拡張を後押しする現実は、侵略のいまわしい記憶を呼び起こさせる。

16世紀末に壬辰倭乱を起こし、20世紀初めに「桂-タフト密約」を結んで朝鮮を植民地にした日本が再び海外膨張の野望をさらけ出している。軍国化の口実になっている「北の脅威」論の払拭が日本の暴走に対する歯止めの一歩だ。今こそ北南関係の改善による朝鮮半島の緊張緩和、統一に向けた民族の共同歩調が求められている。

(金志永)

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