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〈朝鮮学校は日本にとって貴重な存在〉吉澤文寿・新潟国際情報大学教員

「高校無償化」適用外、日本の国際的信用落とす

私は去る1月26日に、「公立高等学校にかかる授業料の不徴収および高等学校等就学支援金の支給に関する法律(以下、「高校無償化法」)施行規則の一部を改正する省令案」に反対するパブリックコメントを文部科学省に提出しました。周知の通り、この省令案の要点は朝鮮学校に「高校無償化法」を適用しないための「改正」ですので、この点に絞って以下の三点について意見を述べました。貴紙でもこの内容を紹介します。

国際人権規約に違反

第一に、朝鮮学校に「高校無償化法」を適用しないのは、国際人権規約に反する行為です。すでに日本が批准している国際人権A規約第13条bは「種々の形態の中等教育(技術的及び職業的中等教育を含む。)は、すべての適当な 方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、一般的に利用可能であり、かつ、すべての者に対して機会が与えられるものとす ること」というものです。この「すべての者」はけっして国籍によって差別されません。それにもかかわらず文科省が省令案の「改正」を強行すれば、日本政府の国際的信用を落とすことになります。

第二に、総聯が運営に関与していることや、日朝関係を理由に朝鮮学校を差別するのは不当であるということです。朝鮮学校の人事や財政に総聯の影響が及んでいることは事実です。しかし、創価学会をはじめとして、特定の団体が学校法人の運営に関与することそのものに特段の問題はありません。

また、朝鮮学校に「高校無償化法」を適用することと、日本人拉致問題などの日朝間の諸懸案が未解決であることはまったく関係がありません。総聯や朝鮮学校に対して、他の外国人団体や外国人学校に適用している制度を適用しないという差別を行うことで、日朝関係が改善することも考えられません。現に、日本政府は日本人拉致問題や朝鮮政府によるロケット発射、核実験に対して、独自の対朝制裁を実行していますが、それによって日本政府が望むような朝鮮政府の行動は実現していません。すなわち、総聯や朝鮮学校への差別を実施しても、日朝関係が改善されるような実効性は期待できません。

第三に、日本社会にとって貴重な朝鮮学校に「高校無償化法」を適用することは、日本社会にとっても有益であるということです。私が住んでいる新潟には、新潟朝鮮初中級学校があります。この学校では年に一度、ミレフェスティバルというイベントを開催し、周辺の日本の公立学校の生徒たちや、地域住民と交流する機会があり、いつも盛況です。また、新潟の大学生や市民を対象に学校訪問を行って、朝鮮学校についての説明会や、日本人も朝鮮人もともに考える授業やワークショップなどを実践してきました。

朝鮮人の仲間がいてこそ

1990年代後半から、朝鮮学校に子どもを通わせている父母たちが中心になって、日本社会で子どもたちが生きていくことを重視した教育内容を学校側に要望し、現在の教育内容もそのようになっています。日本社会で生き抜くマイノリティとして、民族的自尊心を涵養する教育を行うことは重要ですし、そうだからといって、日本社会に敵愾心ばかりを抱かせるような実践ではなく、むしろ朝鮮人でありながらも、日本社会の一員としてどのように生きていくのかという大きなテーマを持って、教育実践をしている場が朝鮮学校です。

朝鮮学校を卒業した子どもたちは、日本社会の様々な場面で活躍します。近年では日本の大学や企業に入る人も少なからずいます。日本人ばかりでは分からないような状況で、朝鮮人の仲間がいることで解決の道が見いだせることもあります。年に数千人の在日朝鮮人が帰化している状況ですが、同質性の強い日本社会で自己肯定感を持って朝鮮人たちが生きていけることは、日本社会にとっても有意義なことです。

最近の日本の教育は、「いじめ」や体罰の問題が注目されていますが、朝鮮学校での実践はこれらの問題を解決するヒントを与えるかも知れません。日本にとってとても貴重な存在である朝鮮学校に、「高校無償化法」が適用されることを願ってやみません。

(朝鮮新報)