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〈朝鮮民族の美 97〉連載を終えて/金哲央

母国を遠く離れ、その文化から遠ざけられて、日本でタヒャンサリ(異国暮らし)を強いられている在日の同胞に、わが民族が長年にわたって培(つちか)って来た代表的な民族的文化・文物を紹介し、それらに親しんでい…

〈朝鮮民族の美94〉 近代絵画①

自画像 高羲東(1886~1965) 両班名家の出身である高羲東(コヒドン)が、どうして当時「」(三文画家)などといわれ、うさん臭い職業とされた画家の道を選ぶようになったのだろうか。 それは開化思想に…

〈朝鮮民族の美93〉尋(ジン)牛見(ギュウケン)跡(セキ)図(ズ)⑥

これは尋牛図または十牛図ともいわれる十面セットの屏風画の最初の一面である。禅でいう悟りに至るまでの人間の姿を、牛を追い求める牛飼いの姿にたとえて説く絵のシリーズである。

〈朝鮮民族の美92〉牡丹図④

牡丹と蓮花は、わが国の人々に最も愛された花である。したがって、この二つの花は最もしばしば民画の画題となり、多くは屏風に仕立てられて、新婚の女性の部屋を飾った。

〈朝鮮民族の美90〉叢石亭図(関東八景図より)③

これまで「美術史」とか「絵画史」といえば、有名な芸術家や画家たちの創作した芸術作品や絵画の歴史であった。無名の、素朴な、民衆の生活の中で作られ愛されてきた作品についての歴史とその評価については、あまり…

〈朝鮮民族の美89〉四瞳虎鶕図 民画②

この虎と鶕(カササギ)の図は、もう何十年も前に、幸か不幸か日本の倉敷民芸館の関係者の目にとまり、そこに収蔵されることになった。日本でまだ、わが国の民画について語る人がいなかった頃のことである。

〈朝鮮民族の美88〉虎と鶕(까치・カササギ)民画①

朝鮮には昔から芸術的鑑賞のための絵画とは別に、人々の生活の必要に応じて、さまざまな場所や時期に、非専門的な絵師によって多様な絵が創作され、利用されてきた。それらは大きく①生活装飾画②記録画③宗教画④冥…

〈朝鮮民族の美87〉書案(文机)⑦

朝鮮における木工家具の特徴は、わが国の住宅様式によって規定されると言える。比較的に部屋が小さく、また冬にそなえて温突(オンドル)房(パン)となっており、西洋や中国の椅子生活とは異なる平坐生活が基本であ…

〈朝鮮民族の美86〉華(か)角(かく)貼(はり)十長生文箱⑥

華角というのは、牛の角を薄い板にして華やかな紅色に着色したもの。それを木の箱にはって、色々な絵を描き飾るのである。 わが国では古くから重要な手工芸の一部門として発達し、現在に続いている。螺鈿(らでん)…

〈朝鮮民族の美85〉五層卓子 木工芸⑤

わが国では、さまざまな特色をもつ木工品が作り出されてきた。 読書用の机はもちろんのこと、書物や日常の品をしまう卓子 、日本のたんすに当たる (チャン)、あるいはお盆、木枕、筆筒など、多様な木工品を民族…

〈朝鮮民族の美84〉海州盤 朝鮮の膳④

海州は平壌南方110キロ、開城の西方70キロの古い街。この黄海道南部一帯で作られたのが海州盤である。 海州盤は三枚の板で作られており、盤面は統営盤と同じく縁がふち取りされて、やや大型の四角のおぼんのよ…

〈朝鮮民族の美83〉羅州盤 朝鮮の膳③

これは最も一般的な羅州盤。全羅道一帯で広く使われたもの。見られるように飾り気のない、直線だけの実用的な食膳である。 盤面はやや厚めの板を、何年も乾燥させた後につかうので、後で歪みが生ずることはない。全…

〈朝鮮民族の美82〉統営盤 朝鮮の膳②

朝鮮の膳は狗足盤とか虎足盤のように、膳の脚の形で名を付けることもあるし、地方別に作られる膳の形の特徴によって名付けされることもある。例えば慶尚南道の南海の中心である統営(今は忠武市となっている)一帯で…

〈朝鮮民族の美81〉狗足盤(개달반):朝鮮の膳(소반)①

中学(旧制)を卒業して東京に進学し、学校のある渋谷区駒場の近くを散歩中、偶然入った「日本民芸館」に展示されている初めて見る白磁の壷を眺めていると「李朝白磁はお好きですか」と話しかけた婦人がいた。

〈朝鮮民族の美80〉到彼岸寺 毘盧遮那如来坐像⑫

朝鮮では8世紀の中葉から、石窟本尊が示すような降魔觸地印像と、この図の示すような智拳印像が、高麗から朝鮮朝時代に至るまでの主流となった。 また、8世紀中頃から鉄仏が作られはじめ、さらに像に銘文を持つも…

〈朝鮮民族の美79〉石窟庵 十一面観音菩薩像⑪

朝鮮の寺院で千年を超える歴史をもつのは石窟庵のみであり、他の寺院はただ寺跡が知られるだけなので、古代の寺院がどのような仏像を、どのように配置したかを知るためにも、原型の残る石窟庵は貴重である。

〈朝鮮民族の美78〉石仏寺石窟庵 釈迦如来坐像

新羅の王族で宰相であった金大成(701~774)は、政治家であると同時に、きわめて優れた建築家でもあった。彼は現世の父母のために仏国寺を建立し、前世の父母のために石仏寺(石窟庵)を建立しようと工事を始…

〈朝鮮民族の美77〉慶州南山三花嶺 石造菩薩立像⑨

この菩薩立像は、弥勒三尊仏の右脇侍の菩薩である。本尊の弥勒菩薩は椅子に両脚を降ろして座っている。三花というのは、三人の花郎(ファラン)を指すのであるが、その名前は分かっていない。