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短編小説「鉄の歴史」7/ビョン・ヒィグン

ビョンドのいいぶんにウンチルもことばを返すことができなかった。 今すぐに、口しのぎのできる仕事を見つけてやらないかぎり、さびしいことだか、工場を離れるというかれを引きとめる手だてとてなかった。けれども…

短編小説「鉄の歴史」6/ビョン・ヒィグン

「はい、そのとおりです」 「あのときも私たちは、じつに苦しいたたかいをしたものでした…」

短編小説「鉄の歴史」5/ビョン・ヒィグン

ウンチルは、やっと、自分が肩に背のうをかけたままでいたことに気がついた。そしてあわてて、 「実は、工場を復旧するさい、何かの役にたてようかと思いまして、工場に散らばっているねじ釘を…」といって、ことば…

短編小説「鉄の歴史」4/ビョン・ヒィグン

質素な身なりをした人物が朝もやの中から姿をあらわした瞬間、ウンチルは感電したようにその場に釘づけになってしまった。かれはわが目を疑った。いくら目をしばたたいて見ても、それはまぎれもない金日成首相だった…

短編小説「鉄の歴史」3/ビョン・ヒィグン

だが傷は致命的であった。ビョンドはあくる日の朝、息を引きとった。 「おい、ウンチル、わしらが溶鉱炉を復旧したら、首相さまをお迎えして、わしらの手で最初の溶銑を流そうと約束したっけな…だけどこのからだじ…

短編小説「鉄の歴史」2/ビョン・ヒィグン

その日、高射砲によって10機も撃墜された損害にもこりず、敵機は二度にわたって平炉職場を爆撃したのだった。 平炉職場では流出の瞬間をひかえて、鉄がぐつぐつとにえたぎっていた。ところが、最初の爆撃のとき近…

短編小説「鉄の歴史」1/ビョン・ヒィグン

戦争の砲火がやんでまだ3、4日ほどしかたっていない、ある早朝のことだった。 3年におよんだ戦禍によってひどく破壊された製鉄所は、まだ、深い朝もやにつつまれていた。れんがのかけらや、さびついた鉄片があち…

短編小説「澄んだ朝」14/コ・ビョンサム

首領のために突撃前へ!平壌市を建設するために突撃前へ!工場をたてるために突撃前へ!溶鉱炉で鉄を生産するために突撃前へ!新しい生活と未来のために突撃前へ!心臓からわきあがるおたけびの声がとどろいた。 朝…

短編小説「澄んだ朝」13/コ・ビョンサム

「軍団長トンム元気ですか。声が聞けてうれしいです。すべての戦線にわたって総攻勢にうつるときがきたようです。王手をかけるときがきたのです」 最高司令官同志は、カチカチという秒針の音に耳をかたむけながら、…

短編小説「澄んだ朝」12/コ・ビョンサム

設計はやりなおさなければならなかったが、前途がぱっと開け、最高司令部を出る設計家たちの足どりはかるかった。「この戦争でわれわれはすでに膀利した!」こんな声がひびいてきて、ふくれあがる胸をおさえることが…