「対北密使」の告白
2012年06月24日 10:02 春・夏・秋・冬大統領選出馬を表明した現職大統領の元側近が09年10月にシンガポールで北側の要人と面談し、北南首脳会談開催に関する覚書を交わしていた事実を明かした。通信社インタビューに答えた任太煕氏は、昨年末まで大統領室長、「対北密使」として行動した時は、労働部長官を務めた。
◆当時、メディアが「南北接触説」を伝えたが、本人は事実を語らなかった。今回は自分が「接触」の当事者だと認めるだけで、その後、北南合意が実を結ばなかった経緯には触れなかった。
◆現政権で対北強硬派の代表格であった前統一部長官は、任氏の「告白」と時を同じくして、セミナーに出席、10年3月に「天安」号艦沈没事件が起きる前までは、北南間に「意味ある対話」が行われていたと述べた。「しかし、北の相次ぐ挑発が原因で、南北関係の修復には至らなかった」というのが、対北政策担当者の「回顧談」だ。
◆首脳会談を進めようとした北側が、その数ヵ月後に南に対する軍事挑発を行ったというのは道理に合わない。元側近らの「証言」は、哨戒艦沈没「北犯行説」の矛盾をあらためて浮き彫りにするものだ。今後、首脳会談のチャンスを潰した責任が追及されれば、その矛先は現政権に向かうだろう。青瓦台を離れ、大統領選出馬を決めた人物が、過去の南北秘話をまるで他人事のように語った理由は、その辺にあるのかもしれない。(永)