〈取材ノート〉心の故郷
2016年01月26日 09:46 コラム各地には、今年、学校創立70周年を迎えるウリハッキョが20校以上ある。また今年は、中等教育実施70周年の年でもあり、在日同胞社会における民族教育の節目の一年ともいえる。
昨年末から、筆者が足を運んだ東京第2初級もそのうちの一校。東京第2といえば、枝川の朝鮮人集住地区にある校舎に、朝鮮のクネやノルティギなどの遊具があり、自身も幼い頃、大きなあの遊具をまえに驚いた覚えがある。この間取材をしながら思ったこと。それは、故郷についてだ。もちろん故郷といえば、祖父母が生まれ育った朝鮮の地を思い浮かべるのだが、3~4世にとって「心の故郷」はどこだろうか。
それが、まさにウリハッキョだと実感させられたのがこの取材期間だった。校舎や教室を見ると懐かしみを覚え、悩んだときは恩師や同級生に電話をかける。校門に足を踏み入れると安心する一方、なぜだか背筋がピンと伸びる。卒業生ならこんな経験をしたことは少なからずあるだろう。とある同胞は、「故郷を離れ、異国の地にやってきた1世たちにとっても、ウリハッキョこそが心の故郷なのだよ」と、話してくれた。
ウリハッキョをとりまく厳しい状況が直ちに改善するとも思えない。けれど異国の地で、何かに悩み迷ったとき、同じ場所にあり続けてくれる「心の故郷」を守っていきたいと切に思った。
(賢)