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還暦を迎え同胞女性が「書芸作品二人展」開催

2014年07月05日 14:35 お知らせ 文化・歴史

ハングルの魅力にとらわれ半世紀

7月26日、27日にかけて在日本朝鮮文学芸術家同盟東京支部書芸部が主催する「書芸作品二人展」が東京芸術劇場アトリエ・イースト(東京・池袋)で開催される。文芸同書芸部員である金英淑さんと康貞奈さんの還暦を祝い、同書芸部が企画した今回の作品展。そこには書芸と共に歩んだ金さんと康さんの半生と、同書芸部の歩みが記されている。

 

2人が書道を始めたのは40代の始め。幼少の頃、父にならった「永」の字(書に必要な技法8種が全て含まれている)を新聞紙に書き練習した康さん。書を学びたいと思いながら、40代になり、やっと書芸家の姜民子さん(錦山塾主宰)の下で書芸を始めた。

康貞奈さん(左)と金英淑さん

康貞奈さん(左)と金英淑さん

会社勤めをしていた金さんは、帰り道にある書道教室に通った。同級生である姜民子さんの個展を見て、ハングル書芸の魅力に惹かれたのをきっかけに同書芸部での活動を始めた。

ハングルの書をこよなく愛している二人は書の魅力について次のように語った。

「昔は筆を使って文字を書くのは当たり前だった。でも今はボールペンや鉛筆、ワープロで楽に文字を書くことができる。それでもなお筆が残っているということは、筆は文字を書くただの手段ではなく、芸術だということ。筆でしか表現できない魅力にはまってしまった」(金さん)

「筆を持ったからといってすぐにかけるわけではない。最初は日常生活の雑念などがあるのだけれでも、点一つ、線一つに集中しているといつのまにか日常がすっと断ち切られる。そして書きたい内容や思いが筆から紙に『気』として表れる。その精神が統一された状態がとても快感だ」(康さん)

外で働き、主婦業をこなし、子育てもする。あわただしい日々の中での継続的な活動は決してたやすいものではない。康さんは5年間父の介護をするかたわら、文芸同の書芸展に毎年出品した。当時を振り返り康さんは「書きたいという思いはあるのに、時間がとれずどんどん力が落ちていくのを感じた。その中でも作品を出し続けたのは、書芸部の若い部員たちの後押しがあったから。私の作品一つひとつには当時の状況や気持ちが現れている。今回の書芸展に向けて筆を握るにつれて、書芸の魅力を再確認できた気がする」と語った。

老若男女が集まる月に一度の書芸部の活動日は、練習のみならず、日本社会に出て働くほとんどのメンバーたちにとって、同胞と共に過ごす貴重な場でもあるという。

文芸同東京書芸部「第13回作品展」の時(中央に金さんと康さん)

文芸同東京書芸部「第13回作品展」の時(中央に金さんと康さん)

「日本の書道教室に通っていたが、日本人の中で漢字だけを書くことに違和感を感じていた頃、文芸同書芸部でハングルを書く喜びに触れた。そしてその魅力にとらわれ今も書き続けている」と金さん。ウリハッキョを出て、文芸同でハングルに触れつづけることの素晴らしさをもっと多くの人に伝えたいという。

康さんはハングルに触れるということはただ書くことにとどまるのではなく、文化や伝統に触れるということだとし「言葉というのは人間の感性を支配するもの。ハングルの書芸に親しむうちにさまざまな文献を読むようになり、民族の感情や情緒に触れることができた。ウリハッキョを出たからこそ感じることの出来る民族の情緒。もし私の孫が日本の学校に行ったとする。そうしたら、私の孫と私の感情や情緒がどうやってつながるのか。そう考えたときウリハッキョは本当に大切なものだと感じた」と書芸への思いを語った。

最後に金さんは「世宗大王の命により創られ、先祖が命がけで守ってきたハングルを私たちが継承している。そして、朝鮮人として生きていくうえで糧となるハングルを今後もますます研究し、表現しつづけることでその素晴らしさを伝えていきたい」と意気込みを語った。康さんは「一つ一つの作品を見ると当時の赤裸々な気持ちを思い出す。作品を出品するのは日記を人に見られるようで恥ずかしいけど、書芸部の部員たちがくれた素晴らしい機会なので初心に戻り、いい展示にしたい」とし、日本で北南の書体を使い、民族の文化を伝え発展させている文芸同書芸部の思いがつまった「書芸作品二人展」に立ち寄り、民族文化に触れる一時を過ごしてほしいと話した。

(金宥羅)

■書芸作品「二人展」

7月26日(土)、13時~19時、27日(日)、9時~17時、東京芸術劇場アトリエ・イースト(JR「池袋」駅西口徒歩2分)。還暦を迎えた金英淑氏、康貞奈氏の文芸同東京書芸部主催による作品展。無料。問い合わせ=アトリエ・イースト(TEL03-5391-2111)。

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