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ニョメン・オーガナイジング㉒オンマサークルから始まる性教育/文・イラスト=張歩里

2026年04月04日 07:45 ニョメン・オーガナイジング

いま問い直される性教育

つい最近、ニュースで「学習指導要領」の改定に向けた議論について報じられていた。

学習指導要領はおよそ10年に一度見直される教育の基本方針だが、その中で「受精」や「性交」を授業で扱わないとする、いわゆる「はどめ規定」をどうするのかという問題は、議論のテーブルにすら上がっていないという。どうやら次期指導要領でも、この規定は維持される可能性が高いらしい。

この「はどめ規定」は1998年に設けられた。

理科で「動物の誕生」を教える際の「人の受精に至る過程」や、保健体育の生殖に関する単元での「妊娠の経過(性交)」について、「取り扱わない」と明記されている。

しかし世界に目を向けると、性教育はすでに大きく変化している。体の仕組みを学ぶだけではなく、人権や多様性の理解を土台に、人間関係やジェンダー、暴力の防止や安全の確保までを含めて学ぶ「包括的性教育」へと広がっているのだ。

とはいえ、私たちの世代が学校で受けた性教育を思い返すと、保健体育の授業で体の発達や性感染症について触れる程度だった。限られた時間、限られた内容。「性教育」はいつ、どのくらい、どのように子どもに伝えればよいのか――。多くの同胞家庭が、いまも手探りのまま模索しているのではないだろうか。

そんな中、私たちの支部のオンマ・オリニサークルでは、「おうちで性教育」をテーマにトークイベントを開いた。

本や絵本を紹介し合いながら学び、日常の家族の会話の中で性についてどう話せばよいのか、参加者同士で率直に意見を交わした。ちょうど自分の体に興味を持ち始める年頃の子どもたち。そんな子どもたちの問いかけに、大人はどう向き合えばよいのか。参加者それぞれが悩みや疑問を持ち寄り、経験を語り合う時間となった。

そもそも日本は性産業の規模が大きい国でもある。世界のポルノの約6割が日本で制作されているとも言われ、非現実的で時に暴力的な表現を含む情報が、まるで「性の教科書」であるかのようにあふれている。インターネットを使えば、子どもたちも簡単にそうした情報に触れることができてしまう。正しい知識を持たないまま好奇心だけが膨らんでいくことは、決して安全とは言えない。

一方で海外では、早い段階から包括的性教育を行うことで、若者が性行動により慎重になるという研究結果も報告されているという。

オンマサークルでの語り合い

トークでは、子どもを育てていると誰もが一度は戸惑うようなテーマが並んだ。

例えば「スカートめくり」や「ズボン下ろし」、「お医者さんごっこ」や「カンチョー」を見かけたとき、大人はどう対応すればよいのか。子どもの遊びとして見過ごされがちな行動だが、「性的ないじめ」とも言えるものであり、性暴力の一つとして捉える必要があるという意見が出た。子どもに深刻さの自覚がない時期だからこそ、「プライベートパーツ」という考え方を通して、口・胸・性器・おしりなど命や体の尊厳に関わる場所は他人が勝手に触れてはいけないことを日常の中で伝えていくことが大切だという。

また「一緒にお風呂に入るのはいつまで?」という話題も出た。体の成長とともに親子の関係も変化していくため、子どもの体に変化が現れる前に、お風呂や寝室を分けるなど親の側から少しずつ線引きをしていくことが必要だという意見が共有された。

さらに「射精や生理をどう教えるか」についても話し合われた。精通や生理は体の自然な成長の証しであり、恥ずかしいこととして扱うのではなく、ケアの方法や体を大切にすることを落ち着いて伝えることが大切だという。

「赤ちゃんはどこから生まれてくるの?」という質問への答え方についても話題になり、子宮から産道を通って生まれてくるしくみを、母親と赤ちゃんが力を合わせる「共同作業」のように伝える方法も紹介された。

トークは終始和やかな雰囲気で進んだが、その背景には、子どもたちの体と心を守りたいという親たちの真剣な思いがあった。

こうして経験や知恵を持ち寄り、悩みを共有しながら一緒に考えられること。それこそが、同胞女性コミュニティーの大きな力なのだと思う。一人で抱え込めば不安になることも、仲間と語り合えば新しい視点やヒントが見えてくる。子育ての知恵も、悩みも、喜びも分かち合いながら支え合える関係がここにはある。

いのちを学ぶ性教育

今では、ウリハッキョでも在日本朝鮮人人権協会による出張授業が行われ、人権の尊重や性の多様性をテーマにした人権教育の取り組みが広がっている。

性教育とは決して特別な知識を教えるためだけのものではない。それは「いのち」「からだ」「健康」について学ぶものであり、同時に人として生きていくための教養であり知性でもある。自分の体や性を肯定的に受け止められること。それは自己肯定感の高い人間へと育っていくための大切な土台になる。だからこそ性教育は、特別な場で一度だけ行うものではなく、ハッキョや同胞コミュニティー、そして日々の家族の会話の中で少しずつ育まれていくものなのだろう。子どもが自分を大切に思い、同じように他者も大切にできる人間へと成長していくために――。同胞女性たちのつながりの中で、これからも「性」について楽しく、率直に語り合っていきたいと思う。

(関東地方女性同盟員)

※オーガナイジングとは、仲間を集め、物語を語り、多くの人々が共に行動することで社会に変化を起こすこと。新時代の女性同盟の活動内容と方式を読者と共に模索します。