ひっくり返せる先入観
2025年12月28日 08:00 取材ノート
東京2025デフリンピックの空手道競技(11月23~25日、東京武道館)に在日本朝鮮人空手道協会の崔慧瑛審判部長が審判員として参加した。
在日朝鮮人として初めて国際総合スポーツ大会の審判員を務める歴史的瞬間を写真に収めるべく、団体戦が行われる3日目の25日、会場に向かった。行くまでは写真をうまく撮れるかが関心事だったが、デフリンピックという未知の世界に見入ってしまった。
印象深いのは会場の熱気だ。チームの監督はVR判定を求めるカードを挙げるとき興奮のあまり十中八九で逆さに掲げていた。客席からは絶えず自国の選手に声援が送られていた。外国人審判員が「はじめ」「やめ」と日本語で合図する姿も新鮮だった。時には監督と相手国の観客が点数について「9-1!」「9-2!」と言い争っている。客席でトルコ選手を応援するトルコ語を聞きながら日本語と発音の親和性が高いのではないかと思ったりもした。
選手たちは試合が始まる時や攻撃を繰り出す時に声を出して、気合を入れたり勢いをつけ、勝った時には喜びの叫びをあげていた。デフリンピックだからと言って決して静かなわけではなかった。未知の世界に対して先入観があった。自分にとって新しい世界は、違う誰かにとっては日常の世界かもしれないという自戒とともに、「百聞は一見に如かず」な体験をすることで、いくらでも先入観をひっくり返せるという気づきを得た。
(侑)