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〈70年の自負、100年への自信⑬〉朝大・朝鮮問題研究センターの活動

2025年12月16日 09:41 寄稿

朝鮮関連のあらゆる研究の拠点

朝鮮大学校は2026年に創立70周年を迎えます。当欄では、大学が歩んできた道のりや現在の教育内容、活躍している卒業生、70周年に向けた取り組みなどを多角的に紹介します。執筆は朝大の教員、関係者が担当します。(月1回掲載)

5つの研究室を設置

朝鮮大学校朝鮮問題研究センター(以下、センター)は2011年11月、海外における朝鮮研究の拠点として本校の役割をさらに高めることを目的に設立された。

変動する21世紀の朝鮮半島情勢や東アジア情勢、そして在日同胞社会の変化に対応するため既存の研究体制を発展的に再編し、創立以来の学術的蓄積を土台に、国際的な学術交流を積極的に進めながら朝鮮研究の専門拠点としての機能を確立してきた。

在日朝鮮人関係資料室開設シンポジウム(2012年7月7日)

センターの中心課題は、国際的視野に立脚した朝鮮研究の深化である。朝鮮民主主義人民共和国を中心とする朝鮮半島の政治・経済・国際関係・法・哲学・文化・歴史・言語研究に加え、在日同胞をはじめとする海外同胞研究まで、幅広い分野を総合的に網羅している。

このため「現代朝鮮研究室」「朝鮮文化研究室」「民族教育研究室」「朝鮮語研究室」「在日朝鮮人関係資料室」の5つの研究室を設置し、各分野で独自性と学際性を備えた研究活動を展開している。これら研究室は国内外研究者を交えた定例研究会やシンポジウムを企画し、本学の教育・研究基盤強化に寄与している。

国際学術交流から地域社会貢献まで

国際学術交流の拡大は、センター活動の最重要課題の一つである。

2012年には立命館大学・同志社大学のコリア研究センターと協定を結び、16年には中国・延辺大学朝鮮半島研究院と学術協定を締結して研究者交流が本格化した。こうした連携により、朝鮮大学校は国際学術ネットワークの中で確かな存在感を示している。

14年に朝鮮大学校で始まった人文学世界フォーラムでは、立命館大学、延辺大学、中国海洋大学、カザフ国立大学などと連携し、京都、延辺、青島、アルマトイ(カザフスタン)などで会議を重ねてきた。朝鮮半島や海外同胞の歴史・社会・文化を幅広く扱う本フォーラムは、国境を越えた研究協力を進める学術交流の場として発展してきた。

また、朝鮮半島情勢をテーマとする国際シンポジウムにも注力している。24年の「〈新冷戦〉のなかの朝鮮半島情勢―平和と多極化時代に向けて」、今年11月の「多極化時代の東アジアと朝鮮」では、海外研究者をはじめ多様な専門家を迎え、情勢を多角的に議論する場を設けた。これらの取り組みは、センターが国際学術討論の拠点として重要な役割を果たしていることを示している。

KUCKS国際シンポジウム(2025年11月15日)

地域社会への学術貢献にも積極的に取り組んでいる。

22年からは古代朝・日関係史をテーマとした歴史講座を開講し、「古代の朝鮮と日本」「日本列島の渡来人と渡来文化」などのシリーズ講演を実施してきた。受講者は累計2500人を超え、学生や同胞たちに加え日本の一般市民にも広く開かれ、現代の朝・日関係や東アジア関係を歴史的視点から考える場を提供している。24年には九州の朝鮮学校でも講座を開催し、学術活動の地域的拡大も進んでいる。

文献アーカイブの構築

資料収集・公開もセンターの重要な使命である。

12年に設置された「在日朝鮮人関係資料室」では、在日朝鮮人運動に関する文書・資料を体系的に収集・保存し、国内外の研究者に公開している。

これらの蓄積は、在日朝鮮人運動研究はもとより、海外同胞研究・ディアスポラ研究の基礎資料として高く評価されている。今後は文献アーカイブの構築と公開をさらに進める予定である。

センターは今後も、国際学術シンポジウムや歴史講座を継続し、朝鮮研究の総合的拠点としての役割をいっそう強化していく。国際社会の変動が続く中、国境を越えた学術対話を広げ、研究成果を社会へ還元することで、地域と世界を結ぶ知的架け橋としてその役割を果たしていきたい。

(金哲秀・朝鮮問題研究センター長、教授)

「ウリ昆虫博士」を目指して/祖国の昆虫相の解明にも一役

野外調査活動をする韓昌道准教授

今年、朝鮮大学校の教員として14年目を迎えた。

朝大を卒業後、2006年に愛媛大学大学院へ進学して昆虫分類学に取り組むようになってから、まもなく20年になる。

この間、アジアに分布するトラカミキリの分類学的研究で学位を取得し、その研究と並行して祖国の昆虫相の解明にも努めてきた。2017年には金日成綜合大学の通信博士院に入学し、大学2年生の頃に抱いた「祖国の博士号を取得する」という夢の実現に近づいていると実感している。

現在は、形態形質と遺伝子情報を組み合わせた分子系統解析に基づくトラカミキリの分類学的研究を進める一方、祖国で採集した約1万5千頭の昆虫類のうち、カミキリムシ科などいくつかのグループに焦点を当てて研究も行っている。

これまでの研究で、アジア地域を中心に1新属・21新種(祖国では3種)・3新亜種、そして70種の新記録種(分布が初めて明らかになった種)を見いだし、学会誌に報告してきた。

コロナ禍以降はこれらの研究に加え、職場のある東京都の昆虫相解明にも力を注ぎ、主には都の重要史跡であり大学に隣接する玉川上水域の昆虫相の調査を積極的に行っている。これまでに、東京都の新記録種や全国的に発見例の少ない種、新参の外来種、さらには絶滅が危惧される種など、20編の報告が関連雑誌に掲載された。

私はこれからも継続してこの3つの研究分野の開拓を続け、創立70周年を迎える朝鮮大学校に自身の研究成果をもって貢献したいと強く決意している。

また、在日同胞1世・2世が築いてきた愛国と闘争の伝統を胸に刻み、子どもたちや同胞たちに夢を与え親しまれる「ウリ昆虫博士」になるため、今後も日々努力していきたい。

(韓昌道・朝鮮大学校准教授、農学博士)

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