警察の人種差別的捜査を問う訴訟/東京地裁で第5回口頭弁論
2025年02月28日 16:09 社会運用実態を示す証拠、原告から多数提出
人種や肌の色、国籍、民族的出自などに基づき捜査対象を選別する「レイシャル・プロファイリング」によって警察から職務質問(職質)を受けたのは、人種差別であり違法だとして、外国ルーツの男性3人が、国と東京都、愛知県に損害賠償などを求めた訴訟の第5回口頭弁論が28日、東京地裁であった。
訴状によると、訴えを起こした3人はパキスタン、米国などの出身で、来日後に日本国籍や永住権を取得。これまで車やバイクを運転中、またスーパーに買い物に行く途中などに警察官から職務質問を受け、在留カードやパスポートの提示、所持品検査を求められた。いずれも警察からは、職質に対する明確な理由の説明はなかった。
この日法廷では冒頭、裁判長が、職質に関する事実認否と関連し、国側に書面による立場を示すよう求めたが、国側は「書面をいつ出せるかわからない」などと主張、よって次回期日の設定に30分以上の時間を要した。これについて原告代理人の谷口太槻弁護士は、裁判後の報告会で、「原告側が提出した証拠に、ちゃんと反論しなくては負けると捉えたからではないか」と自信を見せた。
原告側は今回の期日に際し、4つの準備書面と、約1000ページに及ぶ33つの証拠を提出。▼昨年9月から10月にかけて民間調査会社に依頼し行った日本国籍・外国籍者への職質に関する大規模比較調査と、元警察官の証言、▼同様の職質経験を持つ当事者の証言、▼海外の先行司法判断例などを用いて、「人種差別的職質の運用」実態を示し、その違法性を改めて主張した。
法廷では、これらの内容について、谷川弁護士が陳述を行った。
一方、同裁判で、被告である国側は、原告への職質は合法であり、交通違反が認められるなど職質を行う理由があったと主張している。しかし実際には、交通違反切符が切られていなかったことから、原告側は、国側の主張は矛盾しており差別的職質に該当すると、その違法性を指摘する。
裁判は、4月22日の非公開手続を経て、6月下旬頃に次回期日を迎える予定だ。
職質経験、外国籍者は日本国籍者の5.6倍
裁判後の報告会では、大規模比較調査の結果について、原告側弁護団の宮下萌弁護士から解説があった。